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第25週(6/17~6/23)

▲Pont Alexandre III アレクサンドル三世橋(8区)
五輪でセーヌ川を見渡す観客席の裏側です。

17日月曜日、退職前最後のバカンスから明けると、同僚の私に対する目はどこか柔和に見えます。いよいよ別れが近いことを実感し、同時に新たな環境が迫ることに緊張を覚えます。

同僚らが投げかける別れ間際の常套句に、"tu vas me manquer"(君がいないと寂しくなる)に加えて、"Qu'est-ce qu'on ferait sans toi?"(君無しにどうすればいい?)があります。同僚たちの内に深い愛情を秘めるキャラクターが感じられます。一方で私にはその表現が劇場的に感じられるので、つい何も変わらないだろうと愛想なく返してしまいます。

立つ鳥跡を濁さず。
どこからともなく脳裏に浮かぶこの表現に、背筋を正される思いがします。フランス語の"Laisser un endroit plus propre qu'on l'a trouvé"、英語のLeave it better than you found itという似た表現が倫理的責任や社会への配慮を示すのに対し、綺麗に去ること以上に感謝を示す行為としてまで捉えられるのは日本人ならではの感覚かもしれません。

そこで、これまでは断っていた同僚の包丁研ぎを引き受けることに。

料理学校の授業でシェフは「包丁を手入れすることは、料理人の最も重要な仕事だ」と言い、以後二日に一度研ぐことが習慣になりました。同僚に対してもその習慣を示すことで、感謝の気持ちを具体的な行動で示すだけでなく、プロフェッショナリズムの姿勢を示して締め括りたかったのかもしれません。

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