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2023年11月の記事一覧
『着の身着のままゲーム機』 # 毎週ショートショートnote
信じられないかもしれないが聞いてくれ。
俺はもうすぐ還暦のジジイだ。
輪廻転生とかそんなもの信じちゃいない。
あんたらと同じようにな。
ある朝のことだ。
前の晩、少々飲み過ぎて着の身着のままで寝てしまっていた。
目覚めた時には、窓の外は明るかった。
起きようとした。
ところが、俺の目の前に男が立っている。
背中を向けているので顔はわからない。
突然、ドアを開けて覆面が入ってきた。
なんだ、なんだ。
『強すぎる数え歌』 # 毎週ショートショートnote
京都の数え歌と言えば、碁盤の目の通り名を歌にした「通り唄」だ。
御所の南、丸太町通りから始まる「まるたけえびすにおしおいけ」
この東西の通りの「通り唄」は有名だ。
だから、これを知っているからと言って、京都人になりきれるわけではない。
しかし、南北の通り歌となると、あまり知られていない。
お教えしよう。
「てらごこふやとみやなぎさかい
たかあいひがしくるまやちょう
からすりょうがえむらごろも
しん
『寝心地の悪い脳』 # シロクマ文芸部
「逃げる夢を見るんだよ」
先輩は言った。
「俺じゃないよ、その夢を見るのは」
先輩は自分の頭を指さした。
「こいつだよ」
その先輩とは特別に親しいわけではない。
その日は朝から仕事が立て込んで、休憩が取れなかった。
全員が昼食を終えて戻って来た頃に、ようやくひと段落ついた。
近くのハンバーガーショップのセットで食事を済ませた後、長居するわけにもいかず、近くの公園まで移動した。
幸い天気も良かった
『戦国時代の自動操縦』 # 毎週ショートnote
「お前、何やってんだよ」
「あ、神様」
「お前だって神様だろ。大丈夫なのか、ほったらかしにして」
「だって、あっちは自動操縦にして、こっちでネトフリとかアマプラ見てる方が楽しいんだもん」
「でもさ、俺たちの仕事はあっちだろ。この間もお前、自動操縦にして、とんでもない争いになったとこだろ」
「ああ、あれですね」
「自動操縦なんて、まだ実験段階なんだぞ。使用しないでって通達、読んでない?」
「読みまし
『わたしの誕生日』 # シロクマ文芸部
誕生日が好きです。
あ、あなたの誕生日じゃありませんよ。
他人の誕生日が好きって言う人いるでしょ、あれ気持ち悪い。
パーティーなんかに、のこのこ出かけて行って、自分が生まれたわけでもないのに、
「お誕生日おめでとう」
なんてはしゃいでいる人の気がしれないわ。
わたしはわたしが大好き。
顔もスタイルも声も。
いろいろなものの考え方だって、誰よりも素敵だと思うわ。
あと、血液型とか。
そして、何より
『ごはん杖』 # 毎週ショートショートnote
食事をする時に、杖をつく人たちがいる。
特に、どこかの地方の風習というわけでもない。
家族代々の慣習でもないらしい。
そんなことには関係なく、ある程度の割合で、そのような人がいるみたいなのだ。
最初に見たのは、小学校の時。
転校生のY君だ。
給食の時間に、彼の方からコツコツと音がする。
見ると、彼は左手に、どこに隠していたのか、杖を持ち、右手だけで器用に食べていた。
しかし、それ以上に驚いたのは