見出し画像

『わたしの誕生日』 # シロクマ文芸部

誕生日が好きです。
あ、あなたの誕生日じゃありませんよ。
他人の誕生日が好きって言う人いるでしょ、あれ気持ち悪い。
パーティーなんかに、のこのこ出かけて行って、自分が生まれたわけでもないのに、
「お誕生日おめでとう」
なんてはしゃいでいる人の気がしれないわ。

わたしはわたしが大好き。
顔もスタイルも声も。
いろいろなものの考え方だって、誰よりも素敵だと思うわ。
あと、血液型とか。
そして、何よりも大好きなのが、わたしの誕生日。
これって、自分の努力なんかでは変えられないものでしょ。
それに、一度生まれてしまえば、二度と変えられないのよ。
わたしだけの、わたしのための誕生日。
素敵じゃない。

でもね、時々、間違ってる人がいるの。
わたしの誕生日は、わたしだけのものなのに。
それなのにね、同じ日に生まれたなんて、言ってる人がいるのよ。
わたしだけの誕生日なのに、同じ誕生日の人が生きてるって、おかしいでしょ。
もちろん、わたしだって、広い心は持ってるわ。
昔から、誰かに憧れて、その人の真似をする、髪型や服装や持ち物まで、そっくりにして、仕草まで似せてみたり、そんなことはよくあることよ。
あまりに憧れすぎて、自分とその人の区別がつかなくなるなんていうこともよく聞くわ。
だから、わたしの真似をする人の気持ちもわからないわけではないの。
だからと言って、わたしの前で、わたしに向かって、あらぁ、誕生日が一緒じゃない、なんて、その誕生日が自分のものみたいな、わたしがその人の真似をしているみたいな、そんな言い方はどうかと思うのよ。

わたしの誕生日に憧れるのはわかる。
だって素敵な誕生日だから。
でも、わたしの前でそれはやり過ぎよね。
それって、もう誕生日、奪ってないですか、わたしから。
わたし、奪われてますよね。
だからですよ。
わたしは、被害者ですよね。
わたしの誕生日を守ってあげられるのは、わたしだけなんですよ。
人のものを奪っておいて、いちばん大切なものを奪っておいて、どうして無事でいられると思うのかしら。
そうでしょ、刑事さん。
あとで、わたしの誕生日教えてあげしょうか、こっそりね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?