『着の身着のままゲーム機』 # 毎週ショートショートnote

信じられないかもしれないが聞いてくれ。
俺はもうすぐ還暦のジジイだ。
輪廻転生とかそんなもの信じちゃいない。
あんたらと同じようにな。
ある朝のことだ。
前の晩、少々飲み過ぎて着の身着のままで寝てしまっていた。
目覚めた時には、窓の外は明るかった。
起きようとした。
ところが、俺の目の前に男が立っている。
背中を向けているので顔はわからない。
突然、ドアを開けて覆面が入ってきた。
なんだ、なんだ。
と、誰かが、俺の足を持ち上げた。
すると、目の前の男の足が覆面の顔を蹴り上げたじゃないか。
どうなってると思う間も無く、右腕が操られて、男は覆面の顔面にパンチ。
男が部屋を出ると、俺も引っ張られるように部屋を出る。
俺が頭を押されてすっとかがむと、男も同じようにかがむ。
どこからか飛んできた弾が耳元をかすめる。
わかるか。
ゲームのキャラならともかく、俺はどうやら、誰かのゲーム機になっちまったようなのだ。
あんたのゲーム機じゃないよな。
おい、そこ押すな。