21. 知識はセンスを形成する
Moromi Works™️
1|実はクラシック音楽への興味は小さかった
中学生でマーチングに出逢い、DCIに憧れ、高校卒業してアメリカで4年マーチした。"もっと音楽のことが知りたい" と考え、Age Outした年に音楽大学に進学した。(マーチしながら同時に勉学を始めていた)
音楽大学に進学したが、実はクラシック音楽への興味は小さかった。
ベートベンの「運命」を聴いても、頭の中に運命の扉は開かなかった。
むしろジャズのセッションや講義に潜り込んでいたし、日頃から聞いている音楽は、ジャズやエレクトロ、ポップスなどばかりだった。
マーチングのショウづくりでも、クラシックよりはポストロックやエレクトロ、インストや歌ものばかりを扱うことが多かった。
それでも、和声法をプライベートレッスンに通ってまで学んでいたし、分厚い音楽関係書籍を買い漁っては読んでいた。また、芸術に対する好奇心も強く、気の向くままに観ていた。
20世紀初頭の芸術に、特に惹きつけられた。
そんな音楽大学生活を経て変わった。
"クラシック音楽もとても面白い"
2|クラシックに求められるリテラシー
お茶 / 茶道 / 舞踊など「古典を楽しむ」為には、リテラシーが求められる。
*1:勿論 "全ての方" ではない。そのままに楽しめる方も多くいらっしゃる。
*2:ここでいう「楽しむ」とは、より深く味わう楽しみ方を知るという意味合いが強い。(適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現するなど)
クラシックも同様に聴く側に一定のリテラシーが求められると考えている。
・時代背景
・音楽構成
・和声進行
・作曲者の人生
などの周辺知識があると、全く異なる音が聴こえてくる。
メロディーの美しさやその時代の音楽などを知ることで、聴く視点ができる。この視点が、基準となり他の時代の音楽や同時代の作曲家、芸術史的な視点へと広がっていく。
私の場合、興味が小さかったのではなく、聴き方を知らなかったのだ。
音楽大学時代に知り得た知見が、クラシック音楽の聴き方を激変させた。
3|クラシック音楽から学ぶ一曲
「クラシック音楽を学ぶ為に一曲だけ選んで」と言われたら、迷いなくこの曲を選ぶ。
Bach Cello Suite Nr 1 in G Major|Mischa Maisky
「無伴奏チェロ組曲第一番第1番 ト長調 BWV1007」(J.S.Bach)
チェロ曲の聖典的な曲で、さまざまな音楽家が演奏している。
ミッシャー・マイスキーの演奏が一番好きで、20年以上聴いている。
バッハの音楽は宇宙だ。
たった一本の楽器で、メロディー、伴奏、対旋律まで、信じられないくらい多様な音楽世界が広がる。
たった一つの音が、転調をつくる。
たった一つお音が、物語を紡ぐ。
一秒にも満たない "ほんの微かな溜め" が、全く異なる音楽景色をつくる。
分散和音がオーケストラのような響きを奏でる。
次々と登場するメロディー群が、オペレッタのように呼応し合う。
何百回聴いても、異なる味わいを観せる。
音楽の様々な要素
・メロディーの解釈や理解、美しさ
・ハーモニー構成のギリギリまで削った造形美
・音楽様式の美しさ etc…
を学ぶのに最高の一曲だ。
音楽を学べば学ぶほど、知れば知るほど、どんどん遠くなる。
私はすっかり、バッハに魅せられてしまった。
4|知識はセンスを形成する
知識があることによって、
・幅のある解釈
・理由づけ
・文脈的理解
などができる状態になる。
「どうして、このように演奏したのか」
「どうしてここに、この音を置いたのか」
「では、どのように表現すればよいのか」
といった選択的解釈や幅広い理解ができるようになる。
これが「センス」の根幹となる。
モーツァルトは幼少期より、音楽家であった父より高度な音楽教育を受けている。芸術家ピカソもまた同様に、幼少期より画家であった父より手ほどきを受けている。
「天才 / 神童」と呼ばれる者たちの多くが幼少期より高度な教育を受けたり、知識に基づいた高度なスキルを体得する環境に恵まれている。
歴史の事実が証明しているのである。
逆説的に考えれば、「知識や技能、見識などの素養を身につけていけば、一定のセンスは身につけられる」とも考えられるのではないか。
"知識はセンスを形成する"
本稿が、皆さんの「学ぶきっかけ」になれば嬉しい。
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[Moromi Works™️ ]
- Show Design and Coordinate
- Music Arrangement
- Drill DesignRehearsal Design
- Marching Consultant
沖縄県出身 / 東京在住
好きな食べもの:沖縄そば / タコライス
Blue Devilsでマーチ
多数団体にショウ制作や指導、大会審査員などの活動を行なっている。
Mail:moromi.works@gmail.com
[執筆希望のみなさま]
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⑵ 後日、事務局よりご連絡致します。
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