マファルダ

Muchas gracias por todo. Huye la luna, luna…

マファルダ

Muchas gracias por todo. Huye la luna, luna, luna.

最近の記事

オットセイと白い薔薇 

 蒸し暑さに首を焼かれたまらなく目覚めると早朝の4時を少し回ったところだ。冴子はベッドの上でしばらく体育すわりの姿勢をとり、となりで寝ている男を観察した。男はベースが筋肉質で出来ているがところどころに余分の脂肪が蓄積し始めている。尻肉だけはなぜかそげている。顎がゆるみ、髭は黒いというよりは蒼い印象が強い。  男をよくよく眺めた結果、冴子はそれが「あまり美しいとはいえない」ことに気がついた。  朝食を作った。豆腐の味噌汁には大根を加える。卵を半熟に焼き、プチトマトとレタスを添

    • ハロー・マイフレンド そうだ。呼吸をしよう

       なんだかよくわからないがほぼ毎日ここになにかを書いている。今年の3月にはじめた習慣だ。さいしょのころは欲があった。「ずいぶん長く文章を書いてきた、可能であればだれかに読んでいただきたい、おもしろいわあ、などとはしゃいでいただきたい」そんなことを考えていた。「書く」行為のうらに「だれか」の目に留まりたいとの、いってみれば下心があった。 このごろは、下心がぼんやりしている。書くことがわりと単純に楽しい。書くことだけではない。読むこと、学ぶことが楽しい。寝ることも食べることも楽

      • エミリーに憧れて のっぺらぼうの無駄話

         音楽に国境はないとよく言われる。しかし、音楽ほど民族色を発揮するものも少ない。とくに歌はそうだ。  これをスペイン語にせよ、と問題集にある。とりかかる。 なになにほど、なになにするものも、少ない。 不思議な日本語だ。あまり使わない。 スペイン語の模範解答。 Se dice mucho que la música no tiene fronteras. Pero también la música es uno de los pocos aspectos donde se

        • 殺めた記憶 欲と「救済」

           睡眠時間が減った。寝つきが悪く、眠っているのかいないのかよくわからない感覚をふわつく。夢のようなものを見て、でもそれが夢なのか、正気を保った意識が合成した映像なのか、あまりよくわからない。映像がクライマックスに達するとあっけなくふだんのわたしに戻る。ふだんのわたし?ごくごく平たんに暮らすふだんの自分だ。  こころ  あるいは  意識無意識の集合  それらにはおびただしい数の「ひとを殺めた記憶」が潜んでいるような気がしてならない。わたしの脳が示す映像にはよく「ひとを殺めた

        オットセイと白い薔薇 

          newborn baby 水でできた命 ほっぺが丸いね お乳をやろう

           newborn baby 音は海から空から。 きみの鳴き声を蝉が聴いている。 きみを太陽さんまで持ち上げるたくましい腕は きみの父さんだ。 きみの口に乳を注ぐのは きみの母さんだ。 さいしょの言葉は天からふる。 天は高いよ、 newborn baby 生まれたそのとき、 もし空が赤く染まっていても きみはまだ血の意味を知らない。 まだ恐怖の意味を知らない。 ほんとうはだから言葉を知るまえに きみは神に

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          二ンフォマニアと青い花

           女の唇は平面で出来ていた。だから彼女は画用紙を埋めるように口紅を塗る。唇はべったりとだらしなく幾分卑猥な印象に仕上がる。卑猥な印象の唇のままバス停に立ちバスを待つこと8分、市内循環バスがやってくる。女が乗り込むとバスの中には市立病院に向かう老人が複数いて、かれらはいっせいに乗り込んできた女を見る。老人たちの視線は、女の服装、腰回りの肉、ふくらはぎにはりついたスラックスのライン、尻のはりぐあいと、髪のかたち、それらの印象を一瞬のうちに手繰り寄せ、「いい女だ」かそうではないかを

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          女と眉と爪 韓国コスメが楽しい

           眉をどうするか。長年悩んできた。 子どものころは極端に太い眉をしていた。右と左がつながりそうになると女の美術教師に呼ばれ「女の子なんだから」という理由で彼女はわたしの眉をカットした。母親は身の回りを気にするより勉強をしなさい、という人だったから、「女の子なんだから」と言ってくれる美術教師をわたしはなんとなく慕っていた。  濃い眉をどうカットするか。生まれつき病的に手先が不器用なため、眉カットハサミの先端をうまく使えない。カットしすぎ、眉抜きで毛を抜きすぎなど傍目から見たら

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          「存在」が揺れる 泣かないでショップガール

           哲学や政治や歴史を知るのが「なんだか」カッコいいことだと考えていた。外国語に親しみ外国紙を読み、海外の情報を得る、あるいは外国語でのコミュニケーションをとることで自尊心を鼓舞してきた。文学に親しみ、自分でもなにかを「書く」「表現する」ことがゾクゾク嬉しかった。  でもね、最近なにかが変わってきた。  そういうこうことだけじゃないんだよ。    古い映画を観た。You've Got mail トム・ハンクスとメグ・ライアンが共演する懐かしい恋愛映画だ。好きなシーンがい

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          エルドラドとさかさまの十字架

           眠い。朝から眠かった。午前中眠い頭でnoteに一本話を書いた。眼の周りがしびれて鼻がつんとなる。脳みそと筋肉の区別がすでにつかない。言葉はすでにわたしの監視下にない。それは勝手にわたしから出ていく。否、そうではなくて言葉は不意にわたしを裏切り走り出すのだ。つかまえようと手を伸ばすと言葉は跳ねる、跳ねてどこかへ逃げる。  暗い夜を跳ねた言葉を追いかけた。すでに言葉はかつて言葉であったことをかなぐり捨てて具体的な形を帯び始めている。さいしょに眼が現れた。赤く充血した尖った眼。

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          夢から降りて日常へ ワンピースのロイヤルブルー

           朝。である。さっきまでベッドにいた。寝苦しい夜でとちゅう何回も目が覚めた。肩と首の汗がひどいのでパジャマを替えた。2024年の6月末、暑い。夜も昼も暑い。知人に会うと「7月8月どうなっちゃうんだろうね」がよく出る。「7月8月は連日40度で外出禁止になるんじゃないかと思うんです」昨日、寄ったお洋服やさんの女の子が言っていた。ショートカットの小さな幼い表情と肉惑的な身体のアンバランスが目を引いた。ああいう子は相当モテるのだろうなと思う。  モテる子。の人生はいったいどんな風に

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          ぐるぐる模様の真ん中でカエルが跳ねる

           肩にピンクのラジカセ、緑のポロシャツを着た浅黒い肌の男が向こうから尻をふりながら歩いてくる。腕にはラジカセと同じピンク色の腕時計を巻き、今風のサングラスをかけている。ピンクのラジカセはいかにもとってつけたアクセサリーでしかない、音はまったく鳴っていない。男はなにを聞いて、どんなリズムで尻を振っているのだろう?  不思議に思って、わたしは男とすれ違ったあと、堂々とふりむいて男の姿を追った。あいかわらず尻を振っている。小さくてしまった尻だ。パンツの縫い目が尻の割れ目に食い込んで

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          カレーとトラリピ 終わらない物語

           カレーを煮た。材料は玉ねぎニンジン牛肉グリーンピースカレールゥ。ふつうのカレーだね。火にかかった鍋がまじめにぐつぐついうあいだ、パソコンの前に座りしばしなにかを考えることにする。  なにについて考えるかをまず考えた。 いちばん手っ取り早いのは「恋」について考えることだ。女は「恋」が大好物で、それがない人生なんてどう、つまんなくない?と短絡的ため息をつきがちな生き物で、 「仕事なし、彼氏なし、ヒマだ。遊んでくれ」などという女ともだちに仕方ないからつきあうと 「いやね、気に

          カレーとトラリピ 終わらない物語

          Learn Basque day⑪:テイラー・スィフト Will you still love me tomorrow?

          今、何時? 英語:What time is it now? バスク:Gaur zer ordu da? デート中。恋人に時間をきく。 楽しくてたまらなくてあとどれだけ時間があるのか確かめたくてきく。 退屈で仕方なくてさっさと帰りたいからわざと時間をきく。 単に何時か知りたくてきく。 4時10分だよ。 英語:Now it’s ten minutes past four. バスク:Orain lauak eta hamar minutu dira. 夕方4時10分は微妙な時

          Learn Basque day⑪:テイラー・スィフト Will you still love me tomorrow?

          思考するタコ  O Romeo,Romeo!Wherefore art thou Romeo? 

          noteに書き始めて3か月半がたつ。自分の書くものはどうやら「純文学」に属するらしいと気が付いたのが30半ば。ふむ。ならば純文学系文芸誌に投稿してみましょう。あれからずいぶん月日が流れた。純文学系文芸誌や純文学系各種小説賞に複数回応募した。一度か二度か三度くらいなにかの賞にひっかかりそうになった記憶があるがあれはいつのことだったのかなにしろ月日がびゅんびゅん音をたてて(実際は音などしないが)過ぎてしまったため、自分がなにを書いてきたか、つまりなにを考えて現在に至るのか、よく

          思考するタコ  O Romeo,Romeo!Wherefore art thou Romeo? 

          嘘のスペインひとり旅 バルセロナの海で怪物になる

          潮風に吹かれてバルセロナまでやってきた。アンダルシアではさんざんな目にあった。黒ビールとパエーリャで腹を膨らませていたら太っちょの禿げたアメリカンに絡まれたのだ。年齢はたぶん50より少し上くらい?いや、男の年齢はわからない。日本人でもわからないのだ、アメリカ男の年齢なんかわかるもんか。アメリカ男は下手くそなスペイン語でわたしを口説いてきた。うっとおしかったから下手くそな英語で失せろと言ったら、ネィティブ英語で生意気なジャップのババアだとやり返してきた。  ジャップはよろしく

          嘘のスペインひとり旅 バルセロナの海で怪物になる

          アンダルシアに憧れて 卓球とスペイン語

           卓球をはじめてじきに2年になる。圧迫骨折他各種慢心の結果、半年くらいはサボったがそれでもなんとなく続けている。最近少し欲が出て「試合」を経験したいなどと無謀を考えるようになった。今まで私より「打てない」人にはあまり会ったことがない、つねに私より「打てる」人、上手な人が卓球台の向こう側にいる。なので「試合」はすなわち「負け」を意味するが、「負ける」ことはさほど私にマイナス感情をもたらさない。負けても構わないので試合、あるいは勝負を「経験」してみたい。  1時間ラケットを振る

          アンダルシアに憧れて 卓球とスペイン語