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女と眉と爪 韓国コスメが楽しい

 眉をどうするか。長年悩んできた。
子どものころは極端に太い眉をしていた。右と左がつながりそうになると女の美術教師に呼ばれ「女の子なんだから」という理由で彼女はわたしの眉をカットした。母親は身の回りを気にするより勉強をしなさい、という人だったから、「女の子なんだから」と言ってくれる美術教師をわたしはなんとなく慕っていた。

 濃い眉をどうカットするか。生まれつき病的に手先が不器用なため、眉カットハサミの先端をうまく使えない。カットしすぎ、眉抜きで毛を抜きすぎなど傍目から見たら「奇妙」な眉で生きてきた。眉をあきらめ、ついでに爪もあきらめ、そうこうするうちに女もあきらめそうになる。年をとるにつれ眉が薄くなり、さいきんでは、「生えてるの?」あるいは白髪眉状態に陥っている。

 女友達が「女はおしゃれをあきらめると、瞬く間におばあさんになるよ、ていうか、おじいさんになるよ」という。よく見かけるのだ。おばあさんなのかおじいさんなのかよくわからないお年寄り。お年寄りには敬意を払う、これは人類共通の心得であり、みなさん、わりとクレイジーなこの世界を長年生きてこられたわけだから、本気で「すごいな」「立派だな」と思う反面、自分はきれいに年をとりたいな、おじいさんだかおばあさんだかわからない年寄りにはなりたくないな、などと考える。

 韓国コスメをあれこれチェックしていたら、眉コンシーラーに出会った。これを使って不揃いの眉を一気に塗りつぶすのだ。それから斜めにカットされた眉ブラシで眉に明るいブラウンのシャドウをのせる。マットなイメージの眉になる。これが欲しかったのといえる「眉」を自分で完成することができた。妙に嬉しい。気分がはなやぐ。

 韓国コスメ。いろいろある。まぶたのくまを隠すコンシーラーをいくつか試した。今日あたり買おうかな。ふだん塗らない子どものような爪を手入れするための液剤も買った。ひとぬりするだけで爪に品が宿る。きれいな手になりたいからハンドクリームも欠かさない。リップ用のコスメグッズが大量に並ぶ。いろんな色を試したい。口紅はとても難しくて浮いた色にしてしまうと、女ではなく「お化け」になってしまうので要注意だ。オレンジ系よりピンク系が好き。マットな赤よりやはりピンク系が好き。ピンク・ローズ・桃色。色のグラデーションが楽しい。ファンデーションは肌の地色に合わせるのが常識だがあえてワントーン明るくしてみた。おでことえらにシェーディング用の暗い色をのせるなど小顔を目指したりもする。

 髪は女の重要なファクターで、さいきん、いい匂いのするエアシャンプーがある。ひとつ手に入れたいが、先日顔に吹きかけるタイプの日焼け止めパウダーを買ったばかりだ。これが甘く香る。エアシャンプーの香りと混ざるとどうなるのかしらん?香水系にも慣れていないので「香り」がよくわからない。

 来世、もし生まれ変わることがあったら次は「手先の器用な女」になりたい。爪や髪やメイクの達人になり世界中のコスメを試すのだ。お嫁さんにも学者にもアーティストにも政治家にもなりたくはない。夫や子どもに尽くす人生もごめんだ。「手先の器用な女」になって、世の中の美しいこと楽しいことだけを眺めて暮らしたい。
 それが無理なら来世はワカメでいい。

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