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newborn baby 水でできた命 ほっぺが丸いね お乳をやろう

 newborn baby

  音は海から空から。
  きみの鳴き声を蝉が聴いている。
  きみを太陽さんまで持ち上げるたくましい腕は
  きみの父さんだ。
  きみの口に乳を注ぐのは
  きみの母さんだ。

  さいしょの言葉は天からふる。
  天は高いよ、
  
   newborn baby

  生まれたそのとき、
  もし空が赤く染まっていても
  きみはまだ血の意味を知らない。
  まだ恐怖の意味を知らない。
  ほんとうはだから言葉を知るまえに
  きみは神に抱かれた方が、もしかしたら。

  newborn baby

  けれど世界はとてもきれいだよ。
  草原は泣くんだ。涙をためて。
  星の物語が聴こえたら、
  誰かがきみを愛するためにやってくる合図だ。

  わたしは、きみのために何をしようか。
  カラスの歌を歌おうか。
  トナカイの角を磨こうか。
  きみはきっとアザラシの背を滑りたいだろうね。

  newborn baby

  ちいさな人のかたち
 世界をふたつに分けることを知らない 
  水でできた命
 水でできた命

 母さんはね
 水になりたかった。
 けれど
 きょう、きみに会えたから
 水になるのはうんと先に延ばして
 きみと眠ろう。
 水でできた命
 母さんはね
 いつかは消える
 母さんはね
 でもいまは
 きみと眠ろう。
 
 目が覚めたら
 きみの目が覚めたら
 今とは違う香りがするよ。
 それは
 甘い、というんだ。
 母さんはね
 きみのために白い上着を編んだよ。
 教会の庭で
 ブランコに揺られて
 白い上着を編んだよ。

 newborn baby

   ほっぺが丸いね
 お乳をやろう。
 


  

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