#旅する日本語
きみと同じ名前だから。
「ずいぶん色付いてきたねえ」
プランターに植えられているミニトマトを覗き込むようにして、きみは嬉しそうに笑う。
「まあね。毎日ちゃんと、水やりもしてるから」
僕がそういうと、きみは振り向きながら、「えーっ」と塩ひとつまみ程度の辛口なエッセンスを込めた声を出した。
「前にシャボテン公園で一緒に買ったサボテンは枯らしてたのに?」
「サボテンは意外と難しいんだぞ。水やりすぎちゃダメだって、アイ
SUMMER CUTE GIRL
薄いピンク色のTシャツは、たくさん洗濯をしたのか、少しくたびれて見えた。背中には「SUMMER CUTE GIRL」と白い文字でプリントされている。
左手にはまだ開ききっていないたんぽぽの綿毛をしっかりと握りしめて。小さなヒマワリがたくさん咲いたショートパンツをはいたサマーキュートガール。
麦わら帽子をかぶった小さな頭とハートの飾りのついたサンダルをはいた足はキョロキョロぱたぱた、動きまわるの
おいしく、いとおしく。
「疲れて寝ちゃったみたい」
車の後部座席には、ぐらりと頭をかたむけて眠っている我が子の姿。その横に、汗ばんだ髪をタオルでそっと拭いている妻の姿。
僕はバックミラー越しにチラリと目をやって、その愛おしいふたりの様子にそっと笑みを浮かべた。
「すごくはしゃいでたもんなあ」ついさっきまで、いちご畑を駆けまわって、自分の手のひらよりも大きないちごをもぎ取っていた。
思いっきり口をあけていちごにかぶり