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プロセスエコノミーについて考えてみる

「プロセスエコノミー」とは、それっぽいビジネス新語で本質にあたる信者ビジネス性を隠匿できる良さが特徴だろう。

実はけんすう氏が提唱者で、2020年12月にnoteで公開している。

ちなみに、書籍『プロセス・エコノミー』では冒頭、けんすう氏のnoteを丸ごと引用する所からスタートしている(え?)。

まず、このプロセスエコノミーを一言で言い表すなら「クリエイターの制作プロセスを顧客と一緒に共有する手法でお金を稼ぐ事がメインになる」というマネタイズ手法のことだ。

基本的に顧客は作り手によって生み出された完成品(アウトプット)にお金を出すことで取引を完了させるというのが従来のやり方である。

似たような手法として「クラウドファンディング」という集金手法もあるが、これは募金形式で顧客は原則一度きりのの出費で終わってしまうので、それでは継続的に経済の流れを回すエコノミー(経済圏)とはなりえない。

そうなると、制作途中のプロセスでお金を稼ぐには、作り手がサブスク課金形式で固定客を囲い込んだり、制作過程で作り手と受け手の共犯関係を築くために囲い込んだ課金者に制作作業の一端を協力させるといった手法がメインとなってくる。

こうしたプロセスエコノミーの正体はオンラインサロン等で繰り広げられる信者ビジネスと同質のものだと言えるだろう。

以下メモ。

顧客に提供する価値(人がプロセスに共感するメカニズム)

  • 「機能性(役に立つ)」、「ストーリー性(意味がある)」の軸がある

  • 役に立つものは世の中で1つでよい。意味のあるものは多様性があり、その価値は高い

コトラーのマーケティング4.0のポイント

  • すべてのサービスは自分が自分らしくなるためにある。受動的な消費者に甘んじるのではなく、誰一人置き去りにしない世界を構築するために、消費者もメーカーの活動に参加し社会変革に挑戦していく


6Dですべてのアプトプットが無料に近づく

  • デジタル化、潜在的、破壊的、非収益化、非物質化、民主化

  • 例えば、2050年に電気代はタダになるかも?

  • 2050年には太陽光発電の電気代がいまの10分の1になるといわれている。

  • 植物工場では電気代が野菜の価格に支配的な影響を及ぼしているが、この変化により限りなく野菜が安くなる

  • 食べ物だけでなく衣食住がタダになたとき、人は何に価値を感じてお金を払うのだろうか。成果物ではなく、モノを作ってる過程になっていくであろう


20代の「乾けない世代」が求める報酬

  • 達成や快楽よりも、良好な人間関係、意味合い、ボット。やる意味を感じる、好きな人たちと没頭してできるのであればそれ自体が遊びであり幸福

オバマ大統領を誕生させたSELF-US-NOW理論

  • 私はこういうふうに生きてきた、君はいまこういう道を歩んでるんだよね、私と君にはこんな共通点がある。その共通点をきっかけに連帯しながら皆で何かを起こそうよ。というプロセス

  • 1人が100歩前進するのではなく、プロセスを共有した仲間100人が一歩ずつ前進する

「システム1,システム2理論」(ダニエル・カーネマン 2002年ノーベル経済学賞)

  • 人間の行動様式は、システム1(感情脳)、システム2(論理脳)から出来ている。

  • 人間が行動を起こすときは、論理的なシステム2ではなく、直感的なシステム1に従っている。

  • 従って、新しい変化を起こすときは、正論をいくら論理脳にアプローチしても簡単にはいかない。

  • ワクワクを共有し、キュンと動く感情脳にアプローチするほうが効果的


What、How、Why

  • WhatやHowは一定のモノサシで測れるものであり優劣がつけられるが、

  • Whyはその人の生き方に拠るもの。

  • 米国のファンディングプラットフォーム kickstarterでは最新の商品が数多く紹介されるがリリースの2週間後には性能は80%だけれども価格は半額の類似品が中国で販売される

  • 要はプロセスにWhyがないと簡単に真似され、あっという間に安価で市場に出されてしまう。


NIKEは広告で何をしているのか

  • プロダクトについては一切語らない。エアソールについて語ったり他社との比較もしない

  • 彼らは偉大なアスリートを讃え、スポーツのすばらしさを讃えている。それが彼らであり彼らが存在する理由。彼らを讃えることがNIKEのコアバリューでありWhy。

  • Appleであれば、パッションを持つ人をサポートする。情熱を持つ人と共に冒険を重ねていく。この部分に人々は共感をしている


Whyの共感のしかた2つ。シンパシーとコンパッション

  • シンパシー:「シンクロする」、「感情」という意味。例えば、おにぎりを大量に発注してしまった。助けてほしいという呼びかけに共感すると一時的に応援されるが継続的なものではない

  • コンパッション:「~と一緒に」、「メラメラと燃える情熱」という意味。パッションは「十字架にかけられたキリストの受難」という意味がある。これからゴルゴタの丘で処刑されることがわかっていても信念を曲げず貫くキリストの姿に人々は共感し共にプロセスを伴走した。これは永続的なものである。


プロセスエコノミー的な体験

  • バーベキュー:お金を払って仕事をするというプロセスエコノミー的な体験

  • プロセスエコノミーをバーベキュー型で展開するために小さな役割をたくさん用意し、居場所を作ってあげることが鍵である。コミュニティを作るうえでは余白をあえて作って役割をたくさん用意する事が重要

  • ジャングルクルーズ型は、挑戦プロセスの目撃者にする(ディズニーのジャングルクルーズ)


Y Combinatorのオフィスアワーが生んだAirbnbとstripe

  • Y Combinatorとスタートアップの面談の様子はオフィスアワーと銘打ってYouTubeで公開されている

  • 彼らはWhyという問いの部分、イノベーターの根っこに流れるストーリーを丁寧に深くえぐっていく。するとしゃべっているうちに起業家がパーンと脱皮する瞬間がある。自分はそれがやりたかったのか、と気づくと面談者はすかさずビジネスのフレームを提案する事で、たちまちスタートアップが離陸する。

最後に


この書籍は2021年7月に幻冬舎から刊行されたのだが、本書の編集者は箕輪厚介氏。信者ビジネス商法で一躍脚光を浴びて、サロン内での粗相で文春砲を浴びた張本人が仕掛け人だ。

結局のところ、いつもの界隈の人たちがいつもの怪しげな造語で席巻する手法でいつもの胡散臭い経済圏(エコノミー)を拡充させるために流行らそうとしているだけ、と言う結論が自然なのかもしれない。


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