【BL二次小説】 チャリデカ2《カジノ編》⑩
新「で、カードすり替えの手口はどうやって見抜くんだ?靖友」
新開が問う。
荒北は手を横に振りながら答えた。
荒「すり替えの手口?ンなもん見抜く必要ねェ」
新「え?」
それを聞いて全員が荒北に注目する。
荒「監視カメラで手元をズームしても判らねェ鮮やかな手口だ。ンなもんほっとけ」
新「ほ、ほっとけって……だけど現行犯で……」
新開は信じられないという表情で心配そうに問う。
荒「要は、ヤツのカードが今そこにある筈がないってェことをその場で証明出来りゃァいいンだヨ」
新「……?」
荒北は議長卓の上に登り、胡座をかいて座った。
荒「『レインメン』て名作映画知ってるよな?」
東「あのドム・クルーズとタスティン・ホフマンのやつだな」
全員観たことあるようだった。
荒「カジノで荒稼ぎするシーンが出てきただろ。あの手口を覚えてるか?」
泉「あれは確か、タスティン・ホフマンがカードを全て覚えて……」
荒「その通りだ泉田。さっき言ったカウンティングってのは、そのことだ」
泉「アブッ!!」
泉田が飛び上がった。
泉「む、無茶言わないで下さい!あんなの出来ませんよ!あれは彼に特殊能力があったから……」
荒「もちろん一人じゃ無理だ。だから全員でやる」
泉「え?」
荒北はなるべく解りやすく全員に説明する。
荒「カウンティングってのは、場に出たカードを記憶し、残りカードを把握するという手口だ。違法じゃねェが、かなり強力なため禁止しているカジノも多い」
福「逆に言うと、それをやっているプレイヤーは沢山居るということだな?」
荒「その通りだ福ちゃん。つまり、手順を覚えちまえばそんなに難しいことはねェ。ただ……」
荒北はキョロキョロするジェスチャーをして説明する。
荒「目立たねェようにやるのが難しいだけだ。なんせ自分のだけでなく、他のプレイヤーのカードも覗き込まなきゃいけねェからな」
東「ふむ。なかなか難儀だな」
荒「だが、安心しろ。今回は捜査だ。現場の東堂達はインカムで場のカードをコッソリ読み上げてくれるだけでいい。記録や分析はオレと黒田がやる。司令室でもモニターで確認してるから二重チェックだ」
新「そうか!残りと矛盾したカードを犯人が出したら……!」
荒「その瞬間に御用、ってワケだ」
全員「おおー!」
全員が感心する。
荒「岸神小鞠には、いつでも好きな時にブラックジャックを出せるという必殺技がある。だからわざわざカウンティングなんかしてねェ。あとは、ヤツに悟られねェよう自然に振る舞うだけだ」
荒北は議長卓の上から降りて言った。
荒「空いてる席には一般客も座ってくる。ヤツに警戒されねェためのカムフラージュだ。ヤツが現れるのは週末の夜。決行まであと1週間。オレ達は当日なるべく昼間のうちに現場で予行練習を兼ねながら軍資金を増やし、ヤツを迎え撃つ!」
方向性が確定し、全員が安心した。
チーム箱学は各々の配役の練習に入った。
ガシャーン!
会議室の隅でカクテルボーイの練習をしている真波が、またグラスを割った。
真「うわーん!カクテルグラスって細長くて不安定だよー!」
見かねて新開が駆け寄る。
新「真波、慣れるまでは肘から下も使うんだ。グラスはなるべく腕の延長線上に配置。その方が安定する」
真「はい」
真波がベソをかきながら答える。
新「慣れたらそのうち指先だけでトレイを持てるようになる。むしろ、その方がバランスが取れるんだ」
新開はトレイにグラスをたくさん乗せたまま、ヒラリヒラリと舞うように歩き回る。
真「すごーい。新開さん慣れてますね。てか、似合ってます」
新「ははっ。大学時代にbarでバーテンのバイトしててね。最初に特訓させられたんだよ」
真「へー」
真波が目を輝かせる。
新「確かその頃、毎週末靖友が呑みに通ってきてくれてたなぁ……」
真「あー、いいなー。オレも呑みに行きたかったなー」
新「おめさんはそん時まだ未成年だよ」
新開は、当時の事を回想した。
あれからどうなったんだっけ。
なんでバイト辞めたんだっけ。
……記憶が曖昧で思い出せない。
まるでどこか平行世界の出来事だったかのように……。
新開と真波の様子を離れた所から眺めていた荒北も、当時の事を考えていた。
新開のグラス運ぶ姿、久々に見たなァ。
オレ、なんで毎週末通ってたんだっけ……。
思い出せねェな……。
荒北も記憶が曖昧なようだ。
そうこうしているうちに1週間経ち、決行当日となった──。
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