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【BL二次小説】 チャリデカ2《カジノ編》⑯


細く長めのサラサラヘアにヘアバンド。

タキシードのジャケットは前を留めずに軽く着崩しポケ手のまま、岸神小鞠はクジラ部屋に登場した。

  

美しい切れ長の瞳でざっと場内を見渡す。

 

 

鞠「……!」

 

 

いつもの週末とは違う雰囲気に気付くのにそう時間はかからなかった。

 

 

ブラックジャックコーナーに人だかりが出来ている。

 

小鞠は近付いて行った。

 

 

 

金髪のライオンヘアで太い眉に鋭い瞳の男が、無表情のまま城を築いている。

ギャラリーの歓声にも全く無頓着で、ただ黙々とプレイしている。

 

 

鞠「……」

 

小鞠は興味を持って、福富を観察する。

 

 

 

 

荒「よォし、食い付いた」

黒「計画通りスね」

 

 

荒「岸神には福ちゃんがカウンティングしてることが判る筈だ。しかしヤツにとっちゃそんなこたァどうでもイイ。必殺技を持っているアイツは、しちめんどくせェカウンティングなんかやってる人間を見下してるからだ。だが、オレから言わせりゃア……」

 

 

荒北はニヤリと笑って言った。

 

荒「イカサマなんてェズルに手を染めたテメェの方が、見下しの対象だぜ岸神ィ」

 

 

 

 

 

小鞠はギャラリーの先頭に割り込み、福富をじっと凝視している。

 

 

荒「ちょっと脅かしてやっか。福ちゃん、スプリットだ」

 

 

福富はハートのAとスペードのAを分割した。

 

それぞれにカードが配られる。

めくると……。

 

 

観客「ダブルブラックジャックだ!!」

 

 

ギャラリーは大歓声。

拍手の嵐だ。

テーブルはお祭り騒ぎに。

 

 

しかし福富と小鞠だけは無表情だった──。

 

 

 

黒「今のスプリットでハートのAとスペードのA、残ゼロです!」

 

黒田が報告する。

 

 

荒「何もかもが順調だァ。舞台は整った。さァ、来いヨ岸神ィ」

 

 

 

 

 

ついに、小鞠が動き出した。

 

福富の隣に着席する。

 

 

小鞠は福富の方を向き、ニッコリと笑って話し掛けた。

 

 

鞠「見事なカウンティングですね」

 

 

 

福富は小鞠を見ずに答える。

 

福「偶然だ」

 

 

小鞠はクスクスと笑った。

 

鞠「まあ、そういうことにしておきましょう。……ボク、岸神小鞠と言います」

 

 

敢えてカウンティングという単語を出して上から目線で話し掛け、自己紹介する。

福富を自分より格下のプロと判断した証拠だ。

ここで福富が肯定を返して初めて、互いの秘密は守られる。

 

 

福富は小鞠の方をチラリと見て言った。

 

福「……福富寿一だ」

 

小鞠はニッコリ微笑んだ。

 

 

 

 

二人はプレイを続行しながら会話する。

 

鞠「福富さん……。しかしアナタ派手ですねぇ。そんなプレイしていたら、もうココ使えませんよ」

 


年齢は下だがプロとしてのキャリアは自分の方が上と言わんばかりに忠告する小鞠。 

しかしこのような話の流れになるのは想定済みで、どう答えるのが正解か、福富は荒北から教わっていた。

 

 

福「……旅打ちの途中だ」

 

 

旅打ちとは、1回限りで次の土地へ移動することである。

もう二度と来ないので、派手にぶっこ抜くことが出来る。

 

 

 

鞠「旅打ち!なるほど。そういうことでしたか。是非情報交換したいですね」


福富の返答に驚き、少し見直した風の表情を見せる小鞠。


 

福「情報交換などオレには必要ない。ココは今日が最初で最後だ」

 

鞠「クスクス。まあそう言わずに。それに……ボク……アナタに聞きたいことがあるんです」

 

福「なんだ」

 

 

 

小鞠はプレイの手を止め、福富の顔を覗き込み、ニタリと笑って言った。

 

 

 

 

鞠「福富さん。アナタ……ロードレーサーですね。しかも、エースだ」

 

福「!」

 

全員「!!」




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