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【BL二次小説】 チャリデカ2《カジノ編》③


新「か、勝たせてやるって……」

荒「オレの言う通りに賭けろ」

 

荒北はニッと笑い、戸惑う新開の背中をポンと叩く。

新開は半信半疑で言われた席に着いた。

 

 

 

ディーラー「ベットをどうぞ」

 

賭けるコインを出せという意味だ。

 

新「よ、よ~し」

 

新開は思い切って1万円分のコインを並べた。

 

荒「その3倍賭けろ。あと2万出せ」

新「ばっ!ばか言うなよ!小遣いの範囲内で遊ばせてくれ!」

 

背後からの荒北の発言に、新開は飛び上がって声が裏返る。

 

 

荒「オレを信じろ。万一負けたらちゃんと弁償してやんよ」

新「……」

 

新開は冷や汗が流れてきた。

東堂は後ろで黙って眺めている。

 

 

新「わ、わかった」

 

意を決して新開は3万円分のコインを並べた。

 

 

 

カードが配られる。

 

新開の合計は18。

ディーラーは5。

 

新開はホッとしたが、まだわからない。

 

 

ディーラーの2枚目が開かれた。

結果、ディーラーはバースト。

 

 

 

新「は~~~っ!」

 

勝った喜びよりも、3万円を失わずに済んだことへの安堵の方が大きく、新開は息を吐いて胸を撫で下ろした。

こんな心臓に悪いスリルはごめんだ。

 

 

東「3万円が6万円に増えたぞ。良かったな隼人」

 

東堂がニコニコして声を掛ける。

 

新「嬉しいけど、もう止めたい。怖いよ」

 

泣き言を吐く新開に、荒北は畳み掛ける。

 

荒「ヨシ、次はその6万をオールインだ」

新「ファッ!?」

 

ガタッ!

新開は驚いて椅子から立ち上がる。

 

 

新「ばばばば……」

 

目を白黒させて荒北を罵倒しようとしている新開だが、言葉にならない。

 

荒北は新開の両肩を掴んで着席させる。

 

荒「大丈夫。信用しろってェ」

新「じ、尽八、助けて」

東「面白そうではないか。顛末を見せろ」

 

 

東堂は助けてくれないようだ。

死刑台に送られた気分の新開はもうヤケクソになり、6万円分のコインをベットした。

 

 

 

カードが配られる。

 

新開の合計は5。

ディーラーは7。

 

 

 

新「オワタ……」

 

背もたれにグッタリと寄り掛かり、口から魂が抜けそうになっている新開。

 

 

東「ヒットだな?荒北」

荒「いや、スタンドだ」

 

荒北は放心状態の新開の手を掴んで、横にスライドさせた。

 

 

 

「おお~!」

 

周りの観客が歓声を上げた。

拍手も起こっている。

 

その音で新開はハッと我に返った。

 

新「え?」

 

 

東「6万円が12万円になったぞ隼人。おめでとう」

新「え?え?」

 

荒「ヨシ、精算!」

新「え?え?え?」

 

荒北はディーラーからレシートを受け取り、新開に渡した。

 

 

 

荒北と東堂は、まだ訳がわからずフラついている新開の両脇を抱えてブラックジャックテーブルを離れた。

 

 

 

新「……」

 

換金所で万札12枚を受け取って、やっと実感が湧いてきた新開。

 

 

新「すごい……。最初は1万円だけ賭けるつもりだったのに、数分で12万円に……」

 

東「あの後さらに12万オールインしたら面白かったな」

荒「いや、あの次は勝てねェ。ここで止めて正解なんだ」

 

新「なんで?なんであの次は勝てないってわかるんだ?」

荒「ちゃんと見てりゃァわかるんだヨ」

 

 

新「まさか靖友……イカサマ?」

荒「ハァ?オレがイカサマなんかやるワケねーだろバァカ!」

 

 

元ヤンな見掛けと違い、根はクソマジメな荒北が、イカサマなどやる性格ではないということは新開が一番良く知っていた。

 

 

新「ごめん……。お詫びとお礼になんか奢るよ。そうだ、1階のブランドショップフロアに買い物しに行こうか!」

 

 

荒北は新開をチラッと振り返って言った。

 

荒「礼なんかいらねェ。勝つのはわかっていたからな。オレぁ自分の読みが正しかったことが確認出来ただけで大満足なんだ」

新「勝つのがわかっていた……?」

 

荒北の言っている意味がわからない新開。

 

荒「そのあぶく銭は、後輩達に奢ってやれ。きっと全員スッカラカンになって泣いてる頃だろうぜ」

新「……」

 

 

 

新開は、そんなセリフを吐く荒北にボーッとなり、ついつい本音を呟いてしまった。

 

新「好きだ……靖友」

 

 

 

 

荒「ハァ?なんか言ったかァ?」

新「なっ!なんでもない!」

 

聞き返す荒北の声にハッとし、新開は慌てて誤魔化した。

 

 

 

カジノという非日常で華やかな環境が気分を高揚させ、人間の理性を麻痺させてしまうのだ。

 

ギャンブル場って危険だ……。

何年も温め育んでいるこの切ない想いを押し殺し、新開はそう思った。

 

 

 

 

 

 

福富が戻って来ているのに気付いた東堂は、駆け寄って話し掛ける。

 

東「Mr.ピエールは何の話だったのだ?」

 

 

福富はいつも通り生真面目な表情で答えた。

 

福「Mr.ピエールには正式に被害届を出すよう進言しておいた。明日にもオレ達に金城からオーダーが来るはずだ」




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