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●ショートショート●

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これまでに書いた短編小説、ショートショートをまとめたものたち。
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#オリジナル

【ショートショート】 私の生きる世界に

【ショートショート】 私の生きる世界に

 どうして、みんなそんなに「他人」のことに興味があるのだろう。

 これまでにも何度となく思ってきたことを、カフェオレの入ったマグカップを片手にしみじみと思う。

 テレビでは、芸能人の不倫関係がどうとか、政治家の汚職問題がどうとか、朝からずっと垂れ流されている。

 私は、画面の中でやけに熱っぽく語るアナウンサーを、もう冷めてしまったトーストを齧りながらぼんやりと眺める。あ、このストロベリージャ

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【ショートショート】 坂道の先の未来

【ショートショート】 坂道の先の未来

 通学路に、少し勾配のきつい下り坂がある。

 その坂の先に十字路があって、そこを通り過ぎた先で右に曲がると、私の通う学校が見える。

 何てことはない、いつもの道。
 その日は、私には珍しく早起きをして気まぐれに早く家を出たので、通学路に同じ制服の人間はほぼいなかった。

 通い慣れた道なのに、目に入る景色が少し違うだけで異世界のように見えて、不思議な気持ちになる。そんなことを考えながら、ゆっく

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【ショートショート】 宇宙人との交信

【ショートショート】 宇宙人との交信

 「宇宙人って、いると思う?」
 「…また突然だな、何の話だよ」
 「いいから。いると思う?」
 「…俺はいないと思う」
 「そっか」
 「お前は?いると思うの?」
 「うん。僕は、いると思う」
 「ふうん。…なんで?」
 「いないって、言い切れないから」
 「…何だそれ」
 「だって、宇宙広いしいるかもしれないじゃん」
 「それがアリなら、逆にいねえかもしんねーじゃん」
 「“いないかも”しれな

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【ショートショート】 夢みくじ

【ショートショート】 夢みくじ

 ーー大切なものは、その腕に抱きしめられる分だけしか、持ち続けることはできません。新しい「大切なもの」ができたときは、何か一つ、これまで抱きしめていた「大切なもの」を手放すときなのです。どれだけ惜しくても、欲張りは禁物です。それが、今あなたの腕の中にある大切なものを、できるだけ長く大切にするための秘訣かもしれませんーー。

 おみくじの内容を見て、思わずドキッとした。

 その日、私はどうしても仕

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