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唐仁原昌子
2024年6月30日 20:58
人生には、ひどく嫌なことが続く時期がある。 いつからだろう。私は、何となくそういう薄暗い時期に入ったことを感じると、眠る前にそっと祈るということをするようになった。 毎日毎日やってくる真っ暗な夜に、繰り返し繰り返し祈り続けるようになると、それはだんだん習慣になる。 気がつくとそれは、眠りに繋がるルーティンになっていた。 夜、灯りを消した部屋でベッドに入り、目を瞑るその少し前。
2024年6月23日 21:04
寝坊による遅刻から始まった今日は、朝からドタバタ続きだった。 挙げ句の果てに、急な外回りの予定が入ってしまい、昼ごはんもすっかり食べ損ねてしまった。 お腹が空くと、こんなにも心が弱るものなのだなあと、私は自分を俯瞰で見ながら少しだけ感心する。集中力も持たないし、何となく気が立っている。 朝ごはんを食べられなかったのは、寝坊した自分のせいだし、昼ごはんを食べられなかったのは、効率よく動
2024年6月16日 20:03
十年以上も別々な人生を生きてきた、いろんな人間がごちゃ混ぜに存在する学校みたいな環境だと、どうしても「いじる人間」と「いじられる人間」が生まれる。 俺たちのクラスも、例に漏れずしっかりその「病」にかかっていて、俺はどちらかいうと「いじられる側」の人間だった。 昔からそうだったから、そういうものだと思っていたし、自分としてはさほど違和感はなかった。 だからこそ、俺を「いじる人間」がずい
2024年6月9日 23:41
その日は朝からどんよりと曇っていて、母さんに言われて渋々折り畳み傘を持ってきた。 正確にいうと、「ツバメが低く飛んでいるから持っていきなさい」と言う母さんの言葉を、面倒くさいと無視していた。 そうしたら、「あんたは本当に言うことを聞かないね」と、ランドセルの隙間に折り畳み傘を差し込むついでに、ゲンコツをおまけでつけられた。暴力反対。 僕の日常なんて、そんなもんである。 ゲンコツのあた
2024年6月2日 21:48
「今日は、あなたの中の宝物について、語ってもらおうと思います」 黒板の前で先生がそう言うのを、私は頬杖をつきながらぼんやりと聞く。 自分の中の宝物。 プラスチック製のあるアニメキャラクターの人形、カルピスの匂いのする消しゴム、父が出張先で買ってきた異国のポストカード、小さなゼンマイ仕掛けのオルゴール。 配られる作文用紙を後ろのクラスメイトに回しながら、ちょっと考えてみたら、思ったよ