水辺のゴンザレス

詭弁を弄する思想家。雄弁な哲学者に憧れを抱いている。

水辺のゴンザレス

詭弁を弄する思想家。雄弁な哲学者に憧れを抱いている。

最近の記事

さまざまな笑いの論点

 意思疎通の際に笑いを用いることが多々ある。ユーモアのことではない。笑って反応してやることを言っている。  会話の最中に笑ってその場をとりつくろう、あるいは場を和ませる。笑いが持つ効果は凄まじく、言葉など足元にも及ばない。  笑いには積極的なものと消極的なものがある。積極的な笑いとは、相手の言動、あるいは周囲の変動、あるいは自分を含めた環境の変化に対して、くすぐられるものがあり不意にこぼれる、あるいは吹き出すものであり、もしくは相手の言動、あるいは周囲の変動、あるいは自分を含

    • 田舎にはない都市部の公園の偉大さ

       学生時代の4年間を京都で過ごした。徳島で就職してからは、数カ月に1度、京都へ遊びに行く。観光が目的ではない。4年の月日は、私に市民権を与えた。市民権を得た以上、観光客として京都に足を踏み入れることはもうない。京都への旅の目的は、友人に会うためであり、鴨川の河川敷でぼんやりするためであり、銭湯に赴くためであり、学生時代にお世話になった番台と会い、風呂掃除を手伝うためであって、観光することではないのだ。  ただ、この中途半端な、観光客でも市民でもない旅人は、不器用なくせに臆病

      • 小石ばかりの海岸

         小石の積もった海岸で、  ギュ、ギュ、ギュ、と足音が鳴る。  新雪を踏み固めるかのよう。  踏み出せば、小石が沈み、足が埋もれる。サンダルに、小石が入れば立ち止まり、振り落としてまた歩き出す。  思うように進まない。小石の山は私の身長よりも高く聳え、海はまだ見えない。ただ、波の音が聞こえる。  小石の山の頂上。海と、海岸と、広大な松原が、三層になってどこまでも続く。遠くに砂浜が見える。小石の山は途中で切れているようだ。数日前に見た光景はどこにもない。小石の山の情景

        • 秋に寄せて

           秋だ。いつのまにか秋だ。  四国の右下、何もない辺鄙な町で、一人、仕事を終え、事務所から出たその時、ひんやりとした冷気が体を包み、高校生の時分を思い出した。  受験を控えた高3の、秋だか冬だか忘れたが、模試を終えた帰り道、肌寒い夜、一人、田んぼ道を、自転車のペダルを漕いで帰っていった。夜空。臆病な気持ちを抑えきれない静かな夜に、ああ、また、青春が体内で躍動するよ。ペダルを漕いで、風切って、頭が体が冴え渡り、訳の分からぬ喜びが、次々と、跳ねていく。とんとん、ととん、と脈打

        さまざまな笑いの論点

          サイクリングでコースを一周することの特異さ

           ロードバイクに跨って、旅をする。大学1年の時に琵琶湖を一周して、大学2年の時に四国を一周した。社会人になってからは、淡路島と小豆島を一周した。どこに行ってもアップダウンの激しい坂道が待ち構えている。上り坂を前にしては、前のめりになり、両足に力を入れ、時にはうめき声をあげながら、ペダルを漕いでいく。その苦しさと引き換えに、下り坂では、心地よい風を浴びながら、しっかりとハンドルを握って猛スピードで駆け下りていく。上り坂があれば、下り坂がある。どれだけ長い距離を進んでも、一周すれ

          サイクリングでコースを一周することの特異さ

          高規格道路の支柱だけが建つ愛おしさ

           徳島県南部で計画されている高規格道路「牟岐バイパス」は、南海トラフ巨大地震を想定し、津波浸水区域にある現在の国道55号に依存しない新たな国道を造ろうと、2004年度に事業化され、2013年度にようやく工事に着手したが、国交省によると、2020年度末時点で事業の進捗状況は49%に留まり、私がいる牟岐町には、県立海部病院の北と南に、高規格道路の支柱がそれぞれ2本、ぽつねんとある。  中途半端に建てられたまま放っておかれたこれらの支柱は、実はとても愛おしい人工物だ。何かを訴えか

          高規格道路の支柱だけが建つ愛おしさ

          「薬を飲んだおかげで腹の痛みが引いた」という主張の愉快さと「馬鹿にされたから怒っている」という主張の愉快さについて

           ここで主張したいことは2つある。しかし2つとも、原因と結果について言っている。わかりやすくするために(1)と(2)を設ける。どれから読んでも、どちらかだけを読んでも、読めるようになっている。 (1) 実体験に基づいて話そう。すべては実体験から広がっていく。論理や客観性はそのまま生まれるわけでなく、実体験を土台にしている。この土台がないと論理や客観性は生まれない。ならば、実体験から話そう。  4月、腹痛に悩まされていた私は、病院へ行き薬を処方してもらった。整腸剤か何かだろう

          「薬を飲んだおかげで腹の痛みが引いた」という主張の愉快さと「馬鹿にされたから怒っている」という主張の愉快さについて

          初夢in2022

           初夢を見た。おもしろい夢だったので、久々に投稿してみようと思った。  大勢の人がバスに乗っていた。乗客のなかには知り合いもいて、高校生のクラスメイトがその大半だった。わたしはバスの中央で吊り革を持ち、流れていく外の景色を見ていた。田園風景だった。空は晴れていて、稲穂のひとつひとつが鮮やかな黄色を帯びていた。夏なのかもしれない。  バスは緩やかなカーブを走行していた。道路わきに目立たない停留所があり、バスが止まった。誰も乗ってこない。だがよく見ると、バス停には友人のTが立

          《報告》個展を開いた!

           はじめて個展を開いた。11(土)と12(日)の2日間。場所はオルタナティブスペースyuge(京都)。2日間を通して、計21人のお客さんが来場してくれた。コロナで緊急事態宣言発令中ということもあり、来場者数はよくて10人くらいだろうと予想していたがその倍だ。うれしかった。  個展を開くきっかけは実にしょうもない。2か月ほど前、友人に誘われ「九月」というピン芸人のコントを見に行った。そこがたまたまオルタナティブスペースyugeだったというだけのこと。名前の通り、そこは主に芸術

          《報告》個展を開いた!

          負け試合

           小学校の運動場で野球の試合をしていた。0-0のまま9回裏を迎え、相手チームの攻撃がはじまる。初っ端、バッターの打球が左中間に飛んだ。センターを守っていた私はボールの落下地点を瞬時に把握し、猛ダッシュで向かう。ダイビングキャッチすると、ショーバンするもなんとかグローブの先で掴み取ることが出来た。急いで立ち上がり、ファーストへ遠投する。しかし勢い余ったボールは大暴投となり、ファーストが捕りに走るまにバッターはホームベースを踏んでチームは負けてしまった。チームメイトの多くは、試合

          遠い学校

           アパートから遠く離れた学校へと通うことになった。電車で1時間以上かけて移動する。到着した学校の2階には顔写真つきのカードがあって、それを機械に通すことで登校完了とみなされるようだ。カードに添付された写真は証明写真のようなきっちりしたものではなく、日常を切り取ったようなインフォーマルなもので、私のは公園の原っぱでなぜか爆笑しているときの写真だった。「なんでこんな写真が添付されてんのやろ」と呟くと、隣の知らない男の子が「さあな」と言った。  カードを機械に読み通し、みんなで体

          女体化した鳥

           一羽の鳶が目の前を横切り、道路沿いの短い円柱に止まった。何か獲物を咥えている。赤みを帯びた鳥の肉片だった。じっと観察していると、鳶の口からぽろりと肉片が落ちた。あ、落ちた、と思っていると、鳶がいつの間にか女体化し、鳥人間になっている。しかも美人だ。感動と驚きでぽかんとしていると、地面に落ちた肉片も形を変えて張りのある女へと変身し、これまた美人だった。声をかけずにはいられなかった。 「すみません。ちょっといいですか」 「何ですか」鳶の女は怯えたような目で私を見た。明らかに

          少年H

           小学校のフェンスに沿って歩いていると、後ろで少年野球部の後輩だったHが当時と変わらぬ背丈で歩いてくるのを見かけた。  3つ年下のHとは小学校を卒業して以来一度も会っていない。少年のHは、泣き虫で嫌われ者だった。何か不満があるとすぐに泣く。涎や鼻水を盛大に垂らして泣くので、どこか不気味でもあった。  そんなHがこちらへと近づいてくる。むこうはまだ私に気づいていない。会って話すのが面倒だったので、私は近くの病院へと走った。病院には広い駐車場があるはずだった。しかしそこは荒野

          発狂する女

           ある女性と話している。親しい仲ではないらしい、私たちはお互いに敬語を使っている。革張りの椅子に浅く座って向き合っているこの場所は、どうやら彼女の部屋らしい。 「母とはもう数年ほど会っていないんです」  彼女が伏し目がちに言った。 「そうなんですか。では折角ですし会ってみましょう。その方がいい」  私は彼女との間に置かれた机の上にノートパソコンを開いた。zoomの画面が表示され、そこに彼女の母親が映る。 「やめてください。母親の顔なんて見たくもない」  彼女の顔は

          サイコロゲーム

           A・B・Cの3つのチームに分かれ、サイコロゲームが始まった。サイコロを振って出た目の数だけ進み、止まったマス目のクイズに答えながらゴールを目指す。ボードゲームではなく、部屋全体がゲームに利用されていて、壁沿いに巨大パネルが設置され、それがマス目の役割を担っていた。  先にAチームがサイコロを振り、壁沿いを歩いていく。止まったマス目には、植物や虫、海の生き物の絵が描かれていて、その名前を当てるクイズが始まった。Aチームだけでなく、B・Cチームも加わりクイズに答える。見たこと

          サイコロゲーム

          千鳥のノブとサンドウィッチマン伊達

           テレビが2台、部屋の中にあった。10人くらい人がいて、各々好きな体勢でテレビに見入っている。2台ともコントをしていて、どんな番組か忘れてしまったが、ひとつは最新のコント、もうひとつは古いコントをやっていた。古い方はずっと昔の番組らしく、白黒で画質が酷かった。当然私は最新のコント番組に熱中しており、おもしろいので手を叩いて笑った。  私のすぐ後ろでも笑い声がし、振り返ると千鳥のノブがいた。仰向けに寝そべり首だけ90度に曲げた妙な体勢をとっている。ノブは古いコント番組を見てお

          千鳥のノブとサンドウィッチマン伊達