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小石ばかりの海岸

 小石の積もった海岸で、

 ギュ、ギュ、ギュ、と足音が鳴る。

 新雪を踏み固めるかのよう。

 踏み出せば、小石が沈み、足が埋もれる。サンダルに、小石が入れば立ち止まり、振り落としてまた歩き出す。

 思うように進まない。小石の山は私の身長よりも高く聳え、海はまだ見えない。ただ、波の音が聞こえる。

 小石の山の頂上。海と、海岸と、広大な松原が、三層になってどこまでも続く。遠くに砂浜が見える。小石の山は途中で切れているようだ。数日前に見た光景はどこにもない。小石の山の情景は絶えず変動する。

 太陽を背に、海に向って一人、トランペットを吹く。ドとレとミとファの音が出て、ソの音で躓く。うまくソが出たかと思えば、ラとシの音でまた躓き、高いドの音はいつまでも出ない。空気を肺いっぱいに吸いこみ、トランペットを傾け、のけぞり、唇を震わせ、やっと出た高いドは、掠れて情けない音だった。

 小石を踏む音が近づいてくる。夢中でトランペットを吹いていても、小石を踏む音ははっきりと聞こえる。振り返ると、釣り人がふたり。釣り竿とクーラーボックスを手に持ち、波打ち際までやって来る。何度か見たことがある情景。こんな場所で、魚は果たして釣れるのだろうか。

 小石の山でトランペットを吹き続けること一時間、酸欠で頭がくらくらとし、小石の絨毯の上、仰向けに寝転んだ。この場所を見つけたのが一ヶ月ほど前。高いドの音はまだうまく出せない。

 

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