遠い学校

 アパートから遠く離れた学校へと通うことになった。電車で1時間以上かけて移動する。到着した学校の2階には顔写真つきのカードがあって、それを機械に通すことで登校完了とみなされるようだ。カードに添付された写真は証明写真のようなきっちりしたものではなく、日常を切り取ったようなインフォーマルなもので、私のは公園の原っぱでなぜか爆笑しているときの写真だった。「なんでこんな写真が添付されてんのやろ」と呟くと、隣の知らない男の子が「さあな」と言った。

 カードを機械に読み通し、みんなで体育館に向かった。整列していると、斜め後ろの友だち、と言っても誰だかわからない、に「腕まくりしちゃ駄目だよ」と注意された。なぜ私への注意だとわかったかというと、他の生徒は誰もカッターシャツの袖をまくっていなかったからだ。しかもよく見てみると、みんなカッターシャツの首まわりのボタンを留めていて苦しそうにしていた。不思議だと思っていると、先生が登壇し、「制服を着ているものはみな挙手しなさい」と命令した。ぞろぞろと手が挙がる。さっきまでカッターシャツだけだった者も、どこからか制服を取り出してきて着始めた。着終わった者から手を挙げる。どうやらみんな手を挙げてしまうようだ。私は慌てた。

 翌日、といってもいつの間にかアパートに戻っていて起きると朝だったのだが、もう朝の10時で学校へ行く準備をしなくてはならなかった。昼の1時から英語の授業がある。英語の課題が残っていて、まだ新聞も読みかけだったがのんびりとした気分で、まだ時間に余裕があると思っていた。しかしよく考えてみると、アパートから学校まで1時間以上かかる。時計を見ると12時でもう授業に間に合わないのだったが、慌てて歯磨きをし始めた。

 歯磨きを終え、服を着替える。昨日は制服登校だったのに、今日はどんな私腹を着て行こうかなどと考え、手に取ったのは茶色のTシャツだった。お気に入りなのだが、以前どこかで染み汚れをつくってしまっており、洗濯して落としていたはずなのだが、見てみると奇妙な汚れがついていた。ゴムが溶けたような、いや接着剤が完全に固まってしまったような、と形容するほうが近いだろうか、ぶよぶよと弾力はあるのだが絶対に取れそうにない汚れが服全体に付着していて焦った。目が覚めた。

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