リン参上

青い空が広がる天気だった。
美しい空の下、今日も海岸線の道路は、西側に美しいビーチが広がっている。綺麗に整備された道路をスケボーに乗って走り出す少年がいた。

「ドゥードゥルットゥードゥルゥットゥー」
不思議なテンポの曲を刻みながら、少年が黄色いスニーカーで地面を蹴り上げて、スケボーの速度を加速していく。
車一つ通っていない海岸線のカーブした道路を少年は、加速したスケボーに乗りながら、身体を捻って曲がっていく。
茶色い髪が風で靡いていて、赤茶色の半袖パーカーが揺れている。
少年はその下に細身のうす水色のデニムを履いていた。左耳に付けた銀色のピアスが太陽の光に反射して輝いている。
少年は一通りカーブを曲がると、すぐ見えてくる真っ白の大きな門があるルナの家に到着した。
到着したと同時に、スケボーの先端を素早く踏み込むと、それを空中で浮かせて、キャッチした。
少年は右手で持ったスケボーを門のところにかけると、勝手に門を開けて、中の中庭を歩いて行く。
ルナの家の中庭には青色、赤色、黄色といった大小さまざまな花が咲いていた。
そして門から白くて大きな家まで行く途中には緑の綺麗な芝生が広がっている。
少年は颯爽とその中を駆け抜けていくと、チャイムも鳴らさずにルナの真っ白の家の扉を開けて、家の中に入っていった。
木でできた美しく広い玄関を通っていくと、すぐに広いリビングがあり、その横にある大きなカーブを描くように二階まで続く木の階段を少年は鼻歌まじりに上っていく。

ドドドドドドドドド。

勢いよく駆け上っていく少年の足音が家中に響き渡る。
少年は二階に上がると、廊下を一直線に走り抜けて、一番奥にある部屋のドアを開けた。

「…………ドゥルゥットゥルッ」
少年がドアを開けて部屋に入ると、すぐにベッドの上で仰向けになっているルナの方を見た。

「ルナ、おはよ」

「んん…………おあよ」
寝起き満開の声を上げながら、ルナが猫とともに少年を見た。
寝ぐせで黒い前髪がピンピンに跳ねている。
ルナは白いタンクトップに麻でできた黒いズボンを履いていた。両耳に金色のリングピアスを左右それぞれ二つずつ付けている。
長いまつ毛が付いた瞼をゆっくりと瞬きさせて動かす。とろんとした黒い瞳が、入ってきた少年の方をとらえていた。

「ルナルナルナー、今交信できる?俺早く行きたくなった」
少年はそう言うと、部屋の中央にある丸い木の椅子に座り出した。
ルナの家はジャングル部屋みたいで、部屋の四方八方に垂れ下がる系の観葉植物がいくつも下げられている。
部屋の壁際には小さな木の本棚があり、その上にも様々な小さい観葉植物が並べられている。
部屋の中央には背の低いガラスのテーブルと、切り株のような丸い木の椅子が二つ。
その下はオレンジがかった赤色のカーペットが敷かれている。ベッドのシーツはいつも白グレーだ。掛布団も白グレー。
猫のフィスィは美しい白に少し白グレーがかかっている。
フィスィも眠そうに掛布団の上で丸まりながら、中央にいる少年の方を細い目で見ていた。

「えー、もう?昼過ぎとかじゃなかったっけ?…………行くの」

「もう昼だって」

「今何時」

「じゅ…………12時」

「んん?…………ほんとか?…………今のは10時っぽかったな」
ルナが目をこすりながら、少年の方に細い目を向けて不審がる。

「なあぁぁ」
ルナの上で同じようにフィスィが細い目で少年を見ていた。

「いや、そんぐらいだって!……俺、結構家出るの朝遅かったし」
少年がそう言いながら、右上の本棚の上にある鉢植えを眺め出した。
典型的な噓つきの目線移動だ。

「…………フィスィー、リンが噓ついてるか、どーっちだあ?」

「…………なあぁぁぁぁぁ」
フィスィがいつもより長く鳴きだした。
それもいつもより少し低い声だ。若干不機嫌そうな声にも聞き取れる。

「はい…………嘘だね」
頭をポリポリと掻きながら、ルナがリンに寝起きの細い目を向ける。

「なああああ!…………噓発見器かよ!フィスィのやつめ………」

「ほんとは何時ぃ?」

「…………えー、と…………10時28分」
リンが口をとがらせながら、スマホの画面を見てそう言った。

「早いってー、リン…………私まだ眠いんだけど」

「えー…………行こうぜー、ほらもうこんないい天気だって」
リンはそう言うと、ルナの部屋のカーテンをパッと片方を開け出した。
西向きのその窓からは、青い空と、その下の美しい青い海が見えていた。

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