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丘の上

二人はルナの家の後ろにある大きな緑の丘の頂上にいた。 この丘は非常に大きく、そしてここからの景色は島の西側のビーチとその一帯の家々の並びを一望できるのだ。 二人はしばらく頂上でのんびりとその景色を見ていた。ビーチの上空にはかもめが何羽も鳴き声を上げて飛んでいる。 気付けば、フィスィが近くまで来ていた。 「なぁぁぁ」 「あれ?フィスィ珍しい…………ここまで上がってくるなんて」 「この木、俺好きなんだよなあ」 リンはそう言うと、二人がいる場所のすぐ後ろに生えている大きな木を

    • 交信開始

      「それうまい?」 「ん、落ち着く…………」 グラスに入ったホットレモンウォーターをゆっくりと飲みながらルナは目を閉じて身体がじんわりと温まっていくのを感じた。 フィスィは木の椅子に座るルナの太ももの上でまた丸まって座っている。まだ眠いのか目を細めてのんびりとしているのだ。 「ふう…………温まる」 グラスに入ったレモンウォーターを半分くらい飲むと、それをテーブルの上に置く。 ルナは首を左右に動かしてポキ、ポキと音を鳴らした。 朝の柔軟体操もまだしていない。いきなりリンが来た

      • リン参上

        青い空が広がる天気だった。 美しい空の下、今日も海岸線の道路は、西側に美しいビーチが広がっている。綺麗に整備された道路をスケボーに乗って走り出す少年がいた。 「ドゥードゥルットゥードゥルゥットゥー」 不思議なテンポの曲を刻みながら、少年が黄色いスニーカーで地面を蹴り上げて、スケボーの速度を加速していく。 車一つ通っていない海岸線のカーブした道路を少年は、加速したスケボーに乗りながら、身体を捻って曲がっていく。 茶色い髪が風で靡いていて、赤茶色の半袖パーカーが揺れている。 少

        • フィスィ

          「なぁ。なぁぁぁあ」 猫のフィスィが前足を頭に当てて起こして来る。 ルナはぼんやりとベッドの中で目を覚ました。 なんだか寒い。身体が冷えていたみたいだ。 ルナはそのまま掛布団をもう一度体に掛け直した。布団の上でフィスィがゴロゴロと音を立てて丸くなりだした。 少し重くなった掛布団を自分の胸にかけながら、ルナはもう一度目を閉じる。 なんだか不思議な気分だ。何かの夢を見ていた気がする。 なんだろう。 ルナは目を閉じながら、何かを思い出そうとする。 少年。少年が歩いていた。そう。赤い