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黄金色の水溜り

昼間よりも際立つ輪郭

夜の闇に浮かび上がる球体

光り輝く黄金色

小宵は満月

見惚れてしまうほどに美しいが

反面見ていて恐ろしくもある姿形

ウサギや老婆はたまたカニのように見えるのは

想像力のなせる技

数えきれない程の隕石をその身に受けて

刻まれた月面のクレーターも

38万キロも離れた地球からでは物理的な

距離感と神秘性とが相まって荒々しさは

つゆほども見えない

むしろぼやけた境目に描くは絵空事と夢見心地

願うのは例えば誰彼の息災

叶って欲しいのだと手を合わせては唱える言葉が

溶けていく闇の向こう

月の輪郭が徐々に欠けていくのを見るのは

寂しいけれど

再び闇夜にその姿を見つけたら

心は浮き立ち嬉しくなる不思議

満たされた月には何かしら縋りたくなってしまう

魅力と安心感がある

そうしてなんでも叶えてもらえそうな

万能感を感じてしまう

だから僕は窓辺にもたれて見上げているし

むしろこのまま静かな夜の時間帯が

終わって欲しくないとも思っている

黄金色の水溜りにいつまでも浸っていたい

街は寝静まり僕だけが夜空に浮かぶ月を

独り占めにしていると言う優越感も

味わえていたりする

見つめる先には僕は僕の幸せを満たしてくれる

球体の存在

静かな夜のしじまで僕は月と二人きり

この時間がいつまでも続いてほしいと

僕はいまひそやかに願っている

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