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僕の行き先 カマキリの行方

あの日あの時あの場所で

出会ったカマキリは

果たして今頃どうしているだろうか

あの日は11月の第2週

土曜日のよく晴れた青空の下

秋の風が気持ちよく

吹き抜ける丘の上

一匹の丸々と太った

カマキリと僕との睨み合い

僕が手をあげれば

カマキリもカマを振り上げて

引けば押して

攻めたら守り

互いに譲らぬ道の先には

僕にしか見えない幸せの形

カマキリにしか見えない幸せの形

冬を前にした僕らは

互いに求めるものが

互いに歩いてきた道の先にあるのだ

仲良く道を譲り合って先に行かせれば

争いは起きないがいつだってプライドが

邪魔して結局は要らぬ火種に要らぬ睨み合い

時間の無駄

早くせねば冬がすぐそばまで

きていると言うのに

僕らは僕らのプライドに

よって立ち塞がる事になったんだ

言葉なんて通じる筈もない

相手には悲しいかな力こそが

唯一の共通言語

交わされる痛みで測る力関係

僕らは睨み合いこそすれで

静かに睨み合い距離を測り

コンパスで円を描く様に

互いにゆっくり時計回りで

歩を進めていき

やがて立ち位置は逆転

僕らは運良く痛みによる

解決ではなく

牽制という形で

互いの求める形に近づく事が

できたのだ

そうして睨み合ったまま

後ろにゆっくり下がりながら

さよならばいばい

争いは回避され

幸せの形はまだ夢として

叶えられるのだという

安堵感を胸に僕らは僕らの

行くべき道へと

歩いて行ったんだ

カマキリは果たして

自らの幸せを

叶えられたのだろうか

僕はまだ僕の理想とする

幸せの形を

探し彷徨っている

枯れた落ち葉が

木枯らしに吹かれて

秋の深まり

何処に向かおうか

あぁ

冬がすぐそこまで

迫ってきている

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