ツクツクボウシの歌声 1237日
まだまだ歌い続けるツクツクボウシたち
クマゼミが居なくなり代わりに台頭してきた
ツクツクボウシたちは長生きだ
かれこれ一カ月近くは青空の下で主演を務めて
歌を歌いまくっている
9月も終わり10月が煌めいても
夏が翳り始め秋の気配が滲み出してきても
未だに歌は鳴り止まない
最近は特に秋の香りが色濃くなってきた
朝晩は涼しくなってきて流石に静かだが
残暑が際立つ昼下がりなんかに耳を澄ませると
どこからともなく遠くの方から聞こえてくる
ツクツクボウシたちの歌声
軽やかで味わい深く柔らかな音色も
しかし着実にその音量は
小さくなってきているのは
鈍い僕の耳でも感じとれる
あぁ我儘を言っても良いのならば
まだまだ彼らの歌声に浸っていたい
耳のひだに打ちつけては弾ける音符の滴
夏の終わりの寂しさを感じさせてもらえたり
秋の気配にワクワクさせてもらいたい
ゆっくりとでも確かに季節は巡っていく
塩辛い球体が伝い流れる頬を拭いながら
僕は今日も彼らの歌声を見つけて
幸せを手に入れた
小さな体でも燃え盛るほどの情熱でもって
僕の毎日を彩ってくれている
ツクツクボウシたちには感謝してもしきれない
見上げればいわし雲
あちらこちらから漂いはじめた秋の気配
限られた時間の中
あとどれくらいツクツクボウシたちは
歌い続けてくれるだろうか
分からない
分からないがまだしばらくは歌ってくれる筈だ
聞こえてきた時はしっかり聞き入り
忘れない様に鼓膜の横に蓄えて
寂しくなった夜なんかにこっそり聞く事にしよう
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