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変わる季節 見える風景

耕運機の爪がぐりぐりと回って土を耕していく

光景を見ているのは僕だけだけじゃない

首の長い白い鳥たちもまたその光景を

ワクワクしながら見つめている

季節の変化を体感的にも

視覚的にも楽しめて

あぁそろそろ田んぼには水が張られて

そうなれば苗が植えられる時期も

もうすぐなんだなあと思ってしまう

鳥たちは果たしてどうだろう

季節の変化は感じている筈だが

この先の未来と言うよりも今この瞬間に

味わえる喜びの方に集中している様な

そんな気配が感じられる

なぜなら目が真剣だからだ

耕運機の爪ががしがしと

土をほじくり返しながら動いていく

耕運機がほじくり返した土の上に

ばさりばさりとなん羽もの鳥たちが

舞い降りてはくちばしで何かをつついている

あぁ冬の間を眠って過ごしていたであろう

カエルや虫やミミズたちが寝ぼけまなこのまま

くちばしの先に咥えられていく

春の訪れと共に再び動き出した

自然の摂理だとしてもあまりにも切ない

ほんのちょっと寝坊しただけなのに

その寝坊がまさか命取りに

なるだなんて冬眠前には誰も思う訳も無く

気持ち良く寝ていたであろう

彼らの眠りは理不尽なまでに

あまりにも暴力的な目覚まし時計によって

叩き起こされていたのだ

逃げるには目覚めたばかり

だからわたわたとしていて

何が何やら訳もわからない彼らの姿は

鳥たちからしたら今が狙い目

春の味覚にありつくチャンス

収穫の季節は田んぼが

耕される今この瞬間しかない

と言わんばかりに夢中に

くちばしを土に向かってさしまくっている

鳥たちの知恵と人の営みが上手い事

絡み合っているからこそ成り立つ関係性

自然のサイクル

あぁ残酷なまでになんて美しい風景

なのだろうと思う

巡る季節の中で変わらない習性と

それを楽しみにしてしまってる僕の好奇心

来年も再来年もカエルや虫やミミズたちは

この時期になれば無理やり叩き起こされて

起こされた矢先に鳥たちに襲われて

そんな事を歯牙にもかけずに

耕運機はもくもくと自らの仕事をこなして

やっぱり当たり前の様に

田んぼには水が張られるんだ

移ろう季節と見える風景の変わり様を

楽しみながら僕は今日も

田んぼの畦道を歩いていく

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