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エッセイ【祖父の道】0072



みんなのフォトギャラリー登録用イラストであります。ぐわンぐわン。

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【掌編エッセイ】

トラクターというのは毎日使うわけではない。一年の半分は暗い車庫に眠っている。

田んぼの中でトラクターを見ていると、ゴトゴトいう音といい、車よりものんびりしたスピードといい、なんだかあくびをしながら働いているような気がする。

それでも働く車はカッコいい。
赤い車体はぴかぴか、ぐわンぐわン音を立てながら田起こしをする。
白く固くなっていた田んぼが起こされて、真っ黒な土がむくむくやわらかくなる。

道路を走ると黒い土のかたまりがぼこぼこと落ちていく。はたらいた跡が家まで続く。

俺のおじいちゃんは農家だった。
もうずいぶん前になくなったが、元気な頃はいつも畑にいた。
とはいえそう田んぼを見に行くわけでなし、トラクターを動かして働いている姿を見ていたわけではない。

俺が見ていたのはいつでも、耕すのを終えて田んぼから帰ってきたトラクターだった。

車輪も車体も余すところなく泥だらけ。
庭でホースから散水して、泥をなんとか落としている姿。
そうしてぴかぴかになって車庫に入れられて、
また明日泥だらけになって帰ってくる。

おじいちゃんその人の記憶というのはそんなになくて、無口で話さない人だった。
休みの日は競艇や競輪をやってたり、煙草を吸ってる姿だ。
時々畑や田んぼを手伝わせてくれたけど、どういう人だったかはついぞ知らなかった。
仕事に人生が直結している人だった。


それでも、毎年働いてるトラクターを見るたびに、おじいちゃんを思い出す。
思い出すと、心があったかい。

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