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「光と闇と、魔法使い。」最終話
正しい力の使い方
帰り道、柚が身を寄せる家に着いた。すると畑仕事をしていた友明と和代の姿が見える。商人として店を出す以外にも、畑作業の手伝いをしているのだった。
「奇流、あんた学校が再建したら、通えるんだって?」
和代は土まみれの手をはたいて白い歯を見せる。奇流もまた笑顔を向けて答えた。
「うん、いつになるかわからないけど」
照れて頭をかく奇流の背中を友明は叩く。
「本当によかったな、奇流
「光と闇と、魔法使い。」第54話
光の祝福
「最果ての地で眠る光の精霊よ……今、沈黙を破りて我の元へ集え」
ルディは瞬間奇流に目を奪われた。そしてすぐさまスイに目を移すと、驚愕の表情を浮かべたスイの体が眩い。
「我は誓う。我が肉体が朽ち果てるまで、汝と共に在らん事を」
そして次の瞬間奇流はにいっと唇を上げると、両手を振りかざし叫んだ。
「覚醒の眠り人!」
スイの両手から神々しい光が形となって現れた。ルディはすぐに手をかざし
「光と闇と、魔法使い。」第52話
もう、やめましょう
「私の話が信じられないならそれでいい! しかし皆は騙されている! この男が国王になればこの国の壊滅は免れない! この男は自身の命を懸けて、この国に復讐する気なのだから!」
群衆は声を失った。事態を理解しようと曖昧な表情を浮かべている。しかし涼に気圧され、目を逸らせず、誰も涼を止められなかった。口を大きく開けて、ただその姿を目に焼き付けるしかできなかった。涼はサイガに向き直り
「光と闇と、魔法使い。」第51話
処刑
中央広場に設置された処刑場。広場の高い場所に位置し、どの角度からもはっきりと見える。奇流がサイガに担がれて現れた時、人々のうねりは最高潮に達した。
奇流は力が出ない。圧倒的な強さの前に、どうすればいいのかわからない。鈍い思考回路を動かすが、頭に血が上って考えられない。
もう、終わりなのか。
奇流は今にも消え入りそうな意識の中、思う。
ドクターは無事なのかな。
こんな状況でも、真
「光と闇と、魔法使い。」第50話
第四章・決戦
家族が望むもの
サイガの告白に、一同は静まり返る。サイガはゆっくりと顔を上げると、息を吐いて続けた。
「不老不死などとくだらない欲望で俺の国は襲われた。無論家族も戦火に散ったよ。父は王牙の刃に沈み、母は俺を庇って倒れた」
ドクターも嫌気がさした当時の王族の欲望。一つの国を追い詰めた代償は、今ここに復讐者を生み出していた。
「王牙に入るには、相応の調査が入るはず」
カキザキ
「光と闇と、魔法使い。」第49話
生きる理由
その言葉にその場にいた全員の動きが止まった。一番呆気にとられたのは当人であるカキザキだ。思わずナイフを落としそうになるのを何とか堪え、俊成に歩み寄る。
「……は? 何言ってんの? 王牙を解体なんてできる訳ないでしょ」
しかし明らかにうろたえている。そんな様子を見て俊成はくつくつと笑いを堪える様子で答えた。
「王牙の解体は以前から出ていた案だよ……だってそうでしょ。最近は砦も強化さ
「光と闇と、魔法使い。」第47話
少年が出した答え
「一体兵士はどうなってるの」
うんざりした様子でカキザキは呟いた。そして振り返ると、視線の先に空乃と風丸の姿がある。二人は後ろ手に縛られ、何も言わず正座をしてカキザキを見据えた。
「こんな子供にみすみす侵入を許すなんて、仮にも兵士の名前が泣くよ」
カキザキは二人に歩み寄る。そして目線をあわせるようにしゃがむと、「ワタライ奇流のお友達?」と尋ねた。
「うん、大親友!」空乃があ
「光と闇と、魔法使い。」第46話
ワタライのために、自分ができる事。
中央広場はざわつき始めた。国を騒がせたワタライ家の人間が処刑される。人々はそれを一目見ようと次第に集う。そこには柚の両親の姿もあった。
「柚……奇流……」
和代は両手を組んでいる。友明は肩を抱き寄せそっと見守った。人々のざわめきが辺りを包む中、二人は身を寄せ合って無事を祈る。
「イズミヤさん」
声をかけられ振り返ると、雅恵が神妙な面持ちで立ち尽くしていた
「光と闇と、魔法使い。」第45話
真実
どれくらいたったのか。奇流はその場に座り込んで考えていた。あれほど願っていた家族の自由。しかしそれと引き換えに、自身の闇の力を悪用される。もしかしたらたくさんの犠牲が出るかも知れない。奇流はかぶりを振った。断れば殺される。この取引は奇流にとって圧倒的に不利な物だ。しかしさっさと突き返せる物でもない。奇流は額に拳を打ち付け悩んだ。
スイにも会えなかった。奇流はスイの身を案じる。
「奇流君
「光と闇と、魔法使い。」第44話
取引
「副団長! 一体何が!」
何事かと複数の兵士が駆けつけた。すぐに目の前の状況に愕然としたが、奇流を確保するべく動き出す。しかしそれをカキザキは制した。
「いいよ、彼は逃げ出せない。逃げ出さない。だから手を出さないで、下がって」
カキザキの言葉に兵士達は一瞬戸惑った表情を浮かべたが、カキザキの鋭い眼光にすぐに一礼してその場を去った。
「奇流!」
柚が駆け寄ると、奇流は自身が起こした現状
「光と闇と、魔法使い。」第43話
私がいるから。
「君は頑固だねえ。お友達には会えないって言ってるでしょ」
カキザキは笑顔を浮かべて言った。そして片手で何かを叩く。
「っ……!」
柚の姿がそこにあった。頬が赤らんでいる。城の地下一階に存在する拷問部屋。出入口に立つ兵士が、まだ幼い子供を前にカキザキに意見した。
「カキザキ副団長! 子供相手に手を上げるのは……」
するとカキザキは笑顔を崩さず口を開く。
「何? それは私に意見
「光と闇と、魔法使い。」第42話
告白
「全くいいパフォーマンスだね……」
俊成は一枚の紙を手にして呟いた。そこには本日行われる、奇流の処刑の内容が綴られている。一つ息を吐くと紙を机に滑らせ、両手を組んで顎を乗せた。ふと目に入る一枚の写真。そこには幼き俊成が写っている。今とは想像できない無邪気な笑顔。そして隣に佇む一人の男。
「サイガさん……」
俊成は写真の男を指でなぞる。精悍な顔つき。年月の差はあれど、その男はサイガで間違