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小説

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超短編小説。短編小説。漢字一字シリーズなど。
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2024年3月の記事一覧

濁り、沈澱、上澄み(裏)

濁り、沈澱、上澄み(裏)

ありとあらゆる食べ物を口に放り込み飲み込む。そして全部吐く。後悔と罪悪感にひどく苦しめられるがやめることができない。泣きながら食べ泣きながら吐く。このことは誰にも言っていない。

夜、薬がなくては眠ることが出来ない。胸がざわざわしとても不安になる。自分が衝動的に何かをしそうになる。薬を飲むと落ち着くし眠ることができる。

私の体も心もおかしくなってしまった。心身ともに健康で元気だったのに、いつから

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濁り、沈澱、上澄み(表)

濁り、沈澱、上澄み(表)

妻は体調が悪いようだ。夜中に大量に食べ、食べたものを吐いているのを知っている。心の状態も関係しているのだろう。僕は気づかぬふりをしている。
妻は太ったり痩せたりして外見が変化していないから誰も異変に気が付かないだろう。

妻が精神科に通い薬を処方されているのも知っている。

妻の話を聞くのがいいのだろうと思うが妻とは会話が続かず、どう話せばいいのかわからない。いつのまにか、わからなくなってしまった

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妻が消えた日②

妻が消えた日②

 妻が突然消えた。警察にも届け、義両親や僕が知りうる妻の友人達にも聞いてまわった。皆、驚き、どうしてこんなことになったのか、どうしたらいいのかわからない状態だった。

 僕と妻がうまくいってなかったのでは、と思っている人もいた。僕から逃げたのでは?と。
僕が殺したんじゃないか、と疑っている人もいた。

 何を言っているのだろう、僕たちはなんの問題もなくうまくいっていた、幸せだったのだ。なんで僕がな

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妻が消えた日①

妻が消えた日①

 僕の妻ななみが消えた日のことは今でもはっきりと細かいところまで記憶している。
これから帰るとLINEをしてななみから返信もあった。

 僕が帰宅するとクローゼットが少し開いていてハンガーが床に落ちていた。部屋の灯り、エアコンもついていた。飲みかけのマグカップ。フライパンには炒め物。味噌汁も出来ていた。炊飯器もonになっていた。ついさっきまでここにいたのだろう。

 僕がプレゼントしたバッグがいつ

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私たちは

私たちは

私は功太とどうしても一緒になりたかった。一緒に生きていきたかった。一緒になれるならなんでもするし、何もいらないと思った。なんでも渡すから功太と一緒にいたいという願いが叶い一緒になれたのに
涙がでるほど嬉しかったのに
毎日幸せをかみしめていたのに

そんな日々は一年も続かず

功太のことも自分のことも憎くてたまらない
私には帰る場所もなく、行く場所もない

心の自由も魂も売り渡してしまったのでどこに

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僕たちは

僕たちは

僕たちは幸せになるはずだった。
二人で一緒にいられたら嬉しくて楽しくて幸せで、二人なら何にでもなれるし何でも出来ると思っていた。

僕はユリコを幸せにできなかった。
ユリコは自分の体を傷つけるのをやめられない。
常に暗いオーラを放ち瞳はどんよりとして、まるで屍のようだ。
溌剌としたユリコはどこに消えたのだろう。

僕たちは、もう、目を合わせて会話をすることも手を繋ぐこともない。

一緒にいると自分

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