lexia_tachibana

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最近の記事

修行中、ものすごく怒られていた頃の話

私は、新卒で入った会社を約4年で退職した後、3つの特許事務所を経て,独立した。最初の特許事務所は約1年、2つ目の特許事務所は約1年、3つ目の特許事務所は約10年間在籍した。特許事務所における実務の修行は、最初の2つの特許事務所と、3つ目の特許事務所の約1年で合計約3年、その後、弁理士試験に合格したので、後は自分でやってねと言われ、修行を卒業した。 1つ目の特許事務所は、あまり教えてもらえることがなかったが、2つ目の特許事務所は、教えてもらいすぎた。2つ目の特許事務所では、も

    • ホワイトボードの魔術師がいた

      少し前置きが長くなるが、私が会社勤務時代に出会った「ホワイトボードの魔術師」について書いてみたい。 昔、P&Gという消費財メーカに勤めていた私は、男であるにもかかわらず、ウィスパーという生理用品の研究開発部門に配属された。生理用品は女性のための製品ではあるが、女性だけで製品開発をしていると、イノベーティブな製品が出にくくなるおそれがあるため、少数ではあるが男性社員を混ぜていた。これにより、女性では思いつかないような製品の出現を期待しているとのことだった。残念ながらそのような

      • 上司と部下の仕事の役割から考える仕事の進め方

        昔、会社に勤めていた頃、関連部署の管理職の方に、「部下の仕事は上司が物事を判断するための情報を集めること、上司の仕事はその情報に基づいて判断すること」と言われた。その心はというと、以下の通り。 当時私は、研究開発の下っ端であり、データを取って、それを分析することが仕事だった。上司はそれを見て、プロジェクトの進捗を判断をする。例えば、データがよければ次の工程に進み、悪ければ、原因を究明して改善点を検討する。しかし、スケジュールがタイトなときなど、場合によっては、データが悪くて

        • OGSMというフレームワーク

          「P&Gマフィア」という言葉があるらしい。P&G社(現P&Gジャパン合同会社)の出身で各企業で活躍されてる方々をそう呼ぶそうだ。USJをV字回復させた森岡毅氏(現株式会社刀CEO)をはじめとして錚々たる方々が名を連ねているのだが、何を隠そう、私もP&G出身であり、森岡氏の1年先輩なのだ。そういうことで、社会での活躍はさておき、P&G出身という一点のみで、私もP&Gマフィアと勝手ながら名乗らせてもらうことにした。 とはいうものの、実際の私はP&Gで底辺をさまよい、速攻でディス

        修行中、ものすごく怒られていた頃の話

          外国企業が書く英文クレームの可読性について

          パテント誌の2024年7月号に、宮下洋明先生が、請求項表現の改善案に関する論説を投稿されていました。日本出願で一般的に使われているクレームの形式は、知財関係者以外には読みにくく、発明が理解しがたいため、可読性の高いクレーム形式を提案されています。 少し引用させて頂きます。 一般的なクレームは、体言止めが繰り返されるため、各構成について、詳細な説明(修飾語)が表れた後に、初めてその構成の名称が表れます。例えば、以下の例では、「プロセッサ」という構成が表れる前に、「前記メモリに

          外国企業が書く英文クレームの可読性について

          明細書における「設けられている」が示すバリエーション

          日本語明細書では、構成の関係を示すときに、「設けられている」、「備えている」、「含んでいる」、「具備している」、「有している」など様々な文言が用いられます。いずれを用いるかは,ドラフトされる方の趣味にもよると思いますが、概ね同じ意味であると思います。しかし、同じ「設けられている」でも、構成間の関係によっては異なる意味になる場合があります。 例えば、以下の例文を考えてみます。 「Aには、Bが設けられている。」 日本語では、一意的に捉えることもできるようにも思えますが、AとB

          明細書における「設けられている」が示すバリエーション

          仕事におけるコミュ力とは

          この記事を書くに当たって、一般的なコミュ力の定義を調べるため、「【コミュ力とは】 めざせコミュ力おばけ!コミュ力を上げる3ステップ」というサイトを見てみました。 https://www.mottainaihonpo.com/kaitori/contents/cat07/074-communication-skills.html まず、コミュ力とは、「コミュニケーション力またはコミュニケーション能力を略した表現。人との会話や意思疎通などを円滑に行うことができる能力やその程度な

          仕事におけるコミュ力とは

          クレームの作成にセンスは必要か?

          クレームの作成にはセンスが必要だということを、たまに聞きますが、そもそもセンスって何でしょうか? 広辞苑によれば、センスとは、「物事の微妙な感じをさとる働き・能力。感覚。」だそうです。では、クレームを作成する際には、「物事の微妙な感じをさとる働き・能力」が必要なのでしょうか。 クレームは、発明を抽象化しつつ、発明の外縁を明確にし、先行文献との差異を出した文であると思います。例えば、以下が必要になると思います。 (1) 発明の効果を奏するように抽象化した文であること (2)

          クレームの作成にセンスは必要か?

          均等で拾ってもらうための明細書等の作成(その1)

          均等で拾ってもらうためには、主に以下の2つの検討が必要と思われる。 1.Dedicationの法理(マキサカルシトール最高裁判決) 2. 包袋禁反言 まずは1から説明します。 マキサカルシトール最高裁判決で明示されたDedicationの法理によれば、イ号製品と相違する構成が、クレームアップされておらず、実施形態、変形例に記載されている場合には、均等で拾ってもらえない。 つまり、せっかく明細書に書いてある態様でもクレームアップされていない場合には、均等の範囲から放棄し

          均等で拾ってもらうための明細書等の作成(その1)

          外国大手企業に学ぶクレームの作成3 ~項分けで、分かりやすく~

          今回は、P&G社のUS2015/0175345を取り上げます。 https://patents.google.com/patent/US20150175345A1/en?oq=US2015%2f0175345 A package of absorbent articles, the package comprising: a. a container comprising an interior volume; b. a first absorbent article di

          外国大手企業に学ぶクレームの作成3 ~項分けで、分かりやすく~

          侵害訴訟から見た、明細書をこう書いておけばよかったのに。。(その1)

          弊所機械電気部門のメルマガの記事の一部を、メルマガ公開から1,2ヶ月後にnoteで公開します。 昨年から、「侵害訴訟から見た、明細書をこう書いとけばよかったのに。。」というシリーズを始めました。このシリーズでは、侵害訴訟の判決文を分析し、明細書をこう書いておけば勝訴できたのに、あるいは勝訴判決であっても、こう書いておけば訴訟に行くまでもなかったのではないか、という分析を行います。 但し、この分析は、あくまで事後的な判断であり、明細書作成当時は諸処の事情があったと思いますし、

          侵害訴訟から見た、明細書をこう書いておけばよかったのに。。(その1)

          明細書における文の長さと接続詞の使用について ~英語ネイティブが書く英文明細書も参照しながら~

          小説などの文章では、流れを重視し、読み手がスムーズに読むことができるように、単文ではなく、重文や複文を多用していることが多いように思える。例えば、大江健三郎の「見る前に跳べ」の冒頭には次のような文がある。102文字の文であるが、文庫本であれば、4行に亘る文である。 この本の文章には接続詞も結構使われている。例えば、以下の文章のように、「そして」と言う文言が多用され、この本では約250カ所で使われている。「また」と言う文言も100カ所程度使われている。 これに対して、特許明

          明細書における文の長さと接続詞の使用について ~英語ネイティブが書く英文明細書も参照しながら~

          外国大手企業に学ぶクレームの作成2

          今回は、ボーイング社のUS2018/0261026のクレームを取り上げます。機械系のクレームです。原文については、以下のリンクを参照してください。 https://patents.google.com/patent/US20180261026A1/en?oq=20180261026 ポイントは、以下の通りです。 ・欧米のクレームでは、assemblyとの文言が多用されます。日本語としてアセンブリと訳することもできますが、組立体、構造体といった意味になります。 ・conf

          外国大手企業に学ぶクレームの作成2

          変形例のつまみ食いはNG?

          機械電気系の明細書では、実施形態の後に変形例を記載するのが一般的です。変形例は、クレームと実施形態との乖離を埋めるためのもので、実施形態以外の態様をできるだけたくさん記載するのが一般的です。 そのような変形例は、クレームの限定解釈を回避するとともに、補正の材料としても使えます。しかし、平成25年(行ケ)10346号 審決取消請求事件では、審決の判断が覆され、訂正で追加された変形例の構成と、実施形態の構成を組み合わせることは、新規事項に該当すると判示されています。  以下は

          変形例のつまみ食いはNG?

          外国大手企業に学ぶクレームの作成(序章)

          日本と外国とでは、ソフトウエア発明をはじめとして、クレームの作成の形式(しきたり)に違いが見えます。この違いは審査や訴訟に影響を与える可能性があります。例えば、普段、米国企業が書くクレームになれている米国の審査官が、それとは形式の違うクレームを見た場合、同じように発明を認定できない可能性があり、これによって想定外の引用文献が引用されるなど、審査がスムーズに進まない可能性があります。 長いものに巻かれろというわけではありませんが、外国で適切な審査結果を得るためには、その国のマ

          外国大手企業に学ぶクレームの作成(序章)

          外国大手企業に学ぶクレームの作成1

          P&G社のUS2015/0175345を取り上げます。以下のリンクをご参照ください。 https://patents.google.com/patent/US20150175345A1/en?oq=US2015%2f0175345 クレーム1は、以下の通りです。 内容に関して特筆すべきところはないのですが、構成要件に、a~eのアルファベットを付して項分けしています。 a~cは、主たる構成要件である容器、第1吸収性物品、第2吸収性物品であり、d, e はwhereinでつ

          外国大手企業に学ぶクレームの作成1