変形例のつまみ食いはNG?
機械電気系の明細書では、実施形態の後に変形例を記載するのが一般的です。変形例は、クレームと実施形態との乖離を埋めるためのもので、実施形態以外の態様をできるだけたくさん記載するのが一般的です。
そのような変形例は、クレームの限定解釈を回避するとともに、補正の材料としても使えます。しかし、平成25年(行ケ)10346号 審決取消請求事件では、審決の判断が覆され、訂正で追加された変形例の構成と、実施形態の構成を組み合わせることは、新規事項に該当すると判示されています。
以下は、問題となった請求項1です。下線部が訂正で追加された事項であり、段落0041から抽出しています。特許権者は、このクレームから下線部の構成に基づく効果(段落0041)と、グレー部分に基づく効果(段落0043)を主張しています。
これに対して、裁判所は、以下のように判示しています。
被告(特許権者)は、別々の記載であっても当業者であれば、その効果を期待して当然に組み合わせることができると反論していますが、この主張に対しては、次のように判断しています。
以上のように、特許権者は、訂正により、明細書の変形例に記載されている段落0041の事項(下線部)を追加しましたが、グレー部分の構成と組み合わせることは、明細書中には記載されていないとして、訂正は新規事項の追加であると判断しました。
この裁判例から読み取れることは、
・実施形態の構成と変形例の構成との関係(または変形例間の構成の関係)が,組合せ可能である場合には、技術常識として当たり前に組合せ可能である場合を除いて、その組合せが可能であることを明示しておくことが必要、と思われます。
変形例は、項目の羅列のように記載されることが多いですが、それぞれが組み合わせ可能であり、且つ実施形態とも組合せ可能であることまで言及する必要があると思われます。
個人的には、変形例の冒頭に「以下の変形例は適宜組み合わせることができる」との記載を必ず入れていますが、重要な組合せについては、個々に組合せが可能であることを明示するような、もう少し踏み込んだ記載が必要と思われます。
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