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2021年1月の記事一覧
『玉と石の神話3』
初めて王の子である双子に謁見した金剛は、そのあまりの美しさに息を飲んだ。と同時に、王と同じく、儚さに不安も覚えた。
「青、紅……御子たちをお護りするため、皆の力を貸して欲しい。今、他の教え子たちも呼び寄せているのだが……お主たちあの二人の行方を知らぬか?」
〘異聞・グリース5〙冥府を統べる三柱
暗く冷たい地の底で
彼は冬を待っていた
やがて巡り
必ず戻って来る暖かい冬を
***
秋も終わりを告げる頃。
「どうなさったのです? もうじき待ちわびておられた冬だと言うのに、そのように浮かないお顔をされて……」
女が主に訊ねた。
女の名はヘカテ。女神・アルテミスの従姉妹で、月と魔術を司る。
漆黒の瞳に光を宿す男は、ヘカテの質問に顎に添えていた指を離し、艶やかな黒
『玉と石の神話2』
王に応じる条件として、金剛は己の信頼する者の招集を提示した。無論、王は快諾したが、真っ先に呼び寄せたかった二人の行方は掴めず、彼らを捜す為にも、金剛はサファイヤの青とルビーの紅を招集する事にした。
尊敬してやまない金剛からの招集に、二人は馳せ参じるのであった。
〘異聞・グリース4〙冥月の女王
冥府に於いて、ハデスとペルセフォネに次ぐ者──その名を『ヘカテ』と言う。
月や闇を司ると言われ、同じく月と狩りを司るアルテミスとは、互いの母が姉妹の従姉妹同士。他にも、月と魔術、豊穣、幻や幽霊、夜と暗闇、浄めと贖罪、出産などを司るとも言われている。
*
デメテルと向き合い、ヘカテの眼差しに変化はなかった。
「……何故(なにゆえ)、ペルセフォネを冥府になど連れて行ったのです
『玉と石の神話』
いつの頃か、いずこの話か。
ある王の元に、得も言われぬ美しい双子が産まれた。
王は喜び、それ以上に心配にもなった。乳白色の肌、絹のような髪の子供たちは、美しくはあってもか弱く見える。
王は、強者と定評のある者を護衛として召し抱える事にした。
その名を金剛と言う。