短編小説『悪魔のようなあいつ』
今日は日蝕で、太陽と地球の間に月が入り込み太陽が見えなくなる。
男はそれをこの目で見ようと窓辺に座った。
近くのハンガーラックにかけてあるベージュのハットをかぶったとき、ブランデーグラスの中の氷が音を立てた。
それに反応するかのように女が目を覚まし、ベッドから男のほうに手を伸ばした。
「お前も見ろよ」
「何を?」
「日蝕」
女はつまらなさそうに手を引っ込めてシーツで顔まで覆った。
シーツからはみ出た脚は細く、ほどよく筋肉がついている。
親指の赤いマニキュアが少しはがれていた。