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ショートストーリー

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短い物語をまとめています。
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#うさぎ

迷宮入り。

迷宮入り。

嘘しかつけない日に良い事があった。
正直に過ごそうとした日は怒られた。

嘘をついてはいけませんと教えられたけど、正直なことが良いわけではないらしい。ついていい嘘というのもあるらしい。

嘘をついて、笑って見せた。
正直に泣いた。

朝から、元気に挨拶した。
やりたくないことを断った。
みんなの話題に話を合わせた。
知らないところで起きた悲惨なニュースを消して、ゲームの続きをした。
もう会う気のな

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「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

眉ををあげて、ニワトリが答える。
「いまのお前みたいに、突然なんかやってくる奴に使う言葉だよ」
「じゃあ、オレはいまヤブカラボウになったのか?」
そう自問するウサギは、悩むように腕を組む。

「いやいや」と、ニワトリは手を振る。
「お前がなったとかじゃなくて、藪の中から急に棒が出てくるみたいに突然でビックリしたときに使う、ことわざ? みたいな言い回しだよ」

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「オレって雑かな?」

「オレって雑かな?」

「なあ、オレって雑かな?なあ、どうだ?」
「その質問が雑だな」
「へー」
「その返事は、もっと雑だ」
「雑ってさ、こう、グチャグチャってなってることだろ?雑炊は、グチャグチャってつくるもんな。でもさ、雑煮はなんであんなにキチッとつくるんだ?」
「なんでだろうな」
「しかもさ、正月くらいにしか名前も聞かない。なんなんだ?つくる時期まで決まってる」
いつに無く真剣に悩む兎は、険しい顔をしている。
「な

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「なんでそんなに眠いの?」

「なんでそんなに眠いの?」

「なあ、なんでそんなにいつも眠いの?」 
兎は、目を閉じて座っているニワトリに聞く。
「べつにいつも眠いわけじゃない」
薄目をあけて横目で見るニワトリは、また目を閉じ、そのまま話す。
「目をつぶるとさ、自分の世界にはいれるからな」
疑った顔で兎が顔を近づける。
「へー。じゃあ、今は自分の世界か?なあなあ」
兎の追求に、ニワトリが一言。
「いや」

「なぁ、なんで春は花粉が多いんだ?」

「なぁ、なんで春は花粉が多いんだ?」

「なぁ、なんで春は花粉が多いんだ?」
兎が、となりで両目を瞑っているニワトリを肘でつつく。
「そりゃあ、春だし。なんか新しい生活のはじまりだって気持ちになるだろ」ニワトリが片目を半分だけあけ、また瞑る。
「あたらしい生命の季節ってことか?」
「ちがう」
ニワトリは寝ぼけたままだが、兎はそんなことには構わない。
「なぁって」
「んぁあ。ソワソワするだろ、だいたい。天気もいいし、気持ちも足取りも軽くな

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「なぁ、なんでお前は飛ばないんだ?」

「なぁ、なんでお前は飛ばないんだ?」

ある二人の日常

「なぁ、なんでお前は飛ばないんだ?」
兎は同じ小屋にいるニワトリを肘でつつく。
ニワトリは、それを煩わしそうに体を揺すっただけで返事をすまし、また白くきれいな羽を手入れしてる。
そんなことには構わず、兎。
「なぁって」
「んあぁっ、なんだよっ」
イライラしたニワトリが、空を睨みつける。
「あんな汚ねぇ空なんか飛んだら、羽が汚れちまう」

短い物語をよく目にするので、わたしも試しに

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