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「薄汚れた履歴書」

ずっとフリーライターを一緒にやってきた友達が、この春ライターの仕事を辞めてまったく違う業界に転職するそう。「うまれて初めてまともな履歴書を書いたけど、就職したことないから空白期間が多すぎて何を書いたらいいかわからない。こんな薄汚れた履歴書なんて誰も見たくないよね」と。

履歴書に書けることがなにもない

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長年フリーライターとして活躍してきた彼女は、ライターの仕事を辞め、4月から会社に勤めてまったく別の仕事を始めるそう。彼女が就職試験を受けるにあたり、私に聞いてきたことが「最初に入った会社は何年だったか」ということ。話を聞いていくと、就職先はまったく違う業界のため、これまでやってきたライターという仕事が理解されなくて、どんどん自分に対して自信がなくなってきたとのこと。

「これまで何年も就職もしないでずっと今まで何をやってきたんですか的な発言をされて、答えに困っちゃって。書籍やWeb記事のライティングをやってきましたといっても、それでどうやってお金をもらえるんですか?と聞かれてね。説明しても理解されないし、主婦のお小遣い稼ぎみたいにみられるんだよ。就職したことがないから履歴書に書けるものはなにもないし。こんな薄汚れた履歴書、誰も見たくないよね」

そう彼女は自嘲気味に話してくれました。

優秀だからこそつぶれることもある

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彼女は、大学生のころからアルバイトで編集の仕事をやっていて、その流れでフリーライターとして独立。私も同じころにライターを始めたこともあって、2年間一緒に同じ師匠の元で活動し、それ以降はたまに一緒に仕事をやるときはあったものの基本的には別々に活動してきました。

彼女は非常に優秀なライターで、担当した書籍は10万部を超えるものが何冊もあります。書籍のライティングを担当するときは、編集者はもちろんのこと著者との関係も非常に大事で、けっこうな難所を何回もこえてきたため、ライターとしてもかなり重宝されていました。

彼女がこれまでに担当してきたのは、一般読者向けの本。ただ内容はかなり専門的なことで、それをわかりやすく伝えるために、ライティングにかける努力も半端なかったと思います。

ライターとして何年もやってきたら、書けなくなることは何度もあります。取材前の下調べから入り、取材では著者とのコミュニケーションを円滑にするべく言葉を選びながら取材を続け、いたいことを要点をつかんで的確にまとめ、わからないことは調べて加筆。ゼロから文章を書くことも大変だけど、書いたものに何度も修正が入り、やっ本になったと思ったら、今度はまた別の本を担当。

それとは別にWeb媒体の取材など別の仕事も行うため、気が休まるときがない、というのが正直なところです。彼女が「もう書けない」というのもすごくよくわかります。

専門知識はあるけれどそれを証明するものがない

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彼女は、医療や食品、体のことなど、これまで取材を通して各方面の専門知識を付けてきているので深い知識はあります。ただそれを証明できる資格のようなものがないため、履歴書重視の会社だと履歴書の段階で落とされてしまうことが多いとのこと。

こういうとき、私は直接自分がやることとは関係なくても資格を取っておかないと不利だなと感じるわけです。記事を書く際にも、いくら自分があることについて専門的に知っていても、それを証明するものがないと読んだ人からしたら「どこの誰が書いたものかわからないから信用できない」となるので、証明できる資格はあったほうがいいと思います。

彼女は、履歴書の職歴だけ見たら、フリーライターとして書く以外なにもないのかもしれない。だけど、面接相手が自分のこれまでやってきたことを知らないのは当然のこと。だからちゃんと自分で伝えることが大事。

履歴書に書けない活動実績をどこまで相手にわかりやすく伝えられるか

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現在、書籍は5000部売れればいい方といわれる中、彼女の担当した書籍は何冊も重版がかかり、10万部超えでシリーズ化したものもある。ちょっと言いにくい話ですが、売れる本の著者はキャラが濃かったりもするので、その人たちとのコミュニケーションを取るのは大事。だからこそ一度信用されたら、その後もずっと仕事を依頼されることに。

ライターは「記事だけ書いて終わり」ではなく、むしろ文章を書くのは最後の仕上げ。もちろん書くのは大変だけど、それよりも大変なのが企画を考えたり、誰に取材をするか、その人の実績や発言の信ぴょう性はどうか、カメラマンやイラストレーターは誰にお願いするのかなどのことも大切。

企画も予算が決まっていたら原稿料の交渉や調整、スケジューリングなどいろいろやらなければいけないことはいっぱいある。さらに常に周りに気を使い、取材対象者とは少ない時間で円滑な人間関係を築くためにコミュニケーション能力も必須。

あまり細かくは書けないけれど、彼女はちゃんと実績を積んできたし、それは数字としても表れているので、そこを伝えたほうがいいんじゃないかという話をしました。

彼女は「ありがとう。てこれまでやってきたことに対して自信を失くしていたけど、元気になったよ」と。

大切なのは「相手が求めていること」を的確に伝えること

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就職や転職は、一般的に大手企業で実績ある仕事をしてきた人のほうが評価されやすいのは事実ですが、場合によってはそれが足かせになることもあります。逆に、フリーランスというだけで社会的立場は弱くなるものの、自分でこれまでやってきたこと、それを踏まえて新しい会社で生かせそうなスキルはなんなのかを伝えれば、雇用される確率は高くなります。

よく私もいろんな人のプロフィールを作るのに、その人の人生をヒアリングしてきました。「この本を作るにあたり、実績となる部分はどこなのか。数字だけじゃなく、人間性を出すためにはどこのエピソードを入れるのがいいのか」など。

履歴書は「自分ががんばってきたこと」をアピールするのではなく、「相手にとってなにが役立つのか。その裏付けや根拠は何なのか」を的確に説明することが大切です。

面接に落ち続けると「自分はいらない人間なのか」と落ち込みがちですが、実際はそうではなくて「伝え方」の問題という場合が大きいなと、そう感じます。もし、自分のやっていることに自信がもてなくなってしまうようなことがあったら、誰かに頼んで客観的に強みと弱みを伝えてもらうのもいいかもしれません。

彼女がこれから先、どんな仕事に就きどう生きていくのか、とても楽しみです。一度きりの人生なのでいろんなことにチャレンジしたい。




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