京田知己

演出家 / 主な監督作品「ラーゼフォン多元変奏曲」「AnemonE」主な演出協力作品「…

京田知己

演出家 / 主な監督作品「ラーゼフォン多元変奏曲」「AnemonE」主な演出協力作品「楽園追放」/ 武蔵野美術大学造形学部映像学科卒 /

最近の記事

2023年4月3日の日記

晩年の(この書き方をする事自体が残念なのだけど)政治的スタンスと行動を批判している人は、80年代から90年代にかけての坂本龍一の文化的なポジションのエッジさ、日本を含めた先端の思想との共鳴度、並びにその影響力の大きさを知らない層なのだろう。 もし批判される必要があるとするなら、氏の政治的スタンスではなく「時代の気分・お気持ち」を感じとれなくなってしまった事であるように思う。それは以前ドリカムが日本で流行っていた時に「こんな音楽は簡単だ」と批判的な発言と共に自らポップス作品を

    • 2016年11月28日の日記

      ・並行して進めている仕事の切り替えにFBを斜め読みしながら、ふと作家の村上龍氏が『だいじょうぶマイフレンド』の撮影をした時に感じたことを音楽家坂本龍一氏との対談(『Ev.Cafe』の中に収録されている)で語っていたことを思い出す午前中。 ・『だいじょうぶマイフレンド』の映画としての(小説としても含まれるけれど)内容云々はさておき、日本人が日本人として描写することされることの苦悩がそこでは語られていたけれど、その苦悩を簡単に乗り越えられるのがアニメキャラなのかなと、昨今の作品

      • 2018年9月29日の日記

        やはりデジタルで修正した方が早いカットとアナログの方が早いカットがあって、その判断基準は複雑で通常の制作では判断が難しいと思う。 そして大雑把な言い方をすればデジタルだと非常にクオリティが上がる。しかし現状のフローにおいてはスピードを求められると厳しい。逆にアナログはスピードが上げられる。しかしクオリティの向上を目指した時に精度の甘さがネックとなってテイクが重なってしまう傾向が高い。 単純な意味でデジタルの方がクオリティが高いという意味ではなく、デジタルは嘘がつけないので

        • 2016年8月11日の日記

          ・結局のところクオリティ保証のための異世界設定とは最後の最後で作品において(作り手の)世界と対峙する覚悟を問わずに済むという逃げの構造でしかないのであって、もちろん細々なところまでデザインされた素晴らしい作品を幾つも知っているけれども、こと自作に関して言えば「最終的に逃げること」を前提にしてきたような気がする。 ・もちろん本来は「より直接的に世界との対峙を描くための戯画化」であったはずだけれども、結果として戯画を描くための描写、表現、ドラマと成り果てていき、挙句に「対峙なぞ

        2023年4月3日の日記

          2019年5月29日の日記

          アニメのレイアウトは写真ではないので嘘八百でも何でも良いのです、基本的には。ただお客さんが「変だな」とさえ思わなければ、それが正解。 そのトリックを多層的に利用して効果的なカットを考え出すのが画面設計の仕事で、そのあたりの例として僕は「ホルス」を見せる事が多いかな、と。 結局のところアニメは多層レイヤー構造の絵によって成立させる画の連続体なわけで、ショット単位の西洋美術的正確性は絶対ではないよね、とかそんな話もしてみたり。 それを踏まえてファーストガンダムとか見ると画面

          2019年5月29日の日記

          2016年4月27日の日記

          僕のやっていることは、所詮ロボットプロレスだし怪獣プロレスでしかないのだけれども、その中でいかにそこに存在していると仮定する生命を、存在しているが故にするであろう行動を描くことに腐心し、その結果として戦争を描いているのであるが、だからと言って僕自身が戦争を描きたくて描いている訳ではない。 まぁエヘクト作画に多大な影響を受けてアニメーションというジャンルを選択した自分にしてみれば、お前は庵野秀明のプロトンビーム・エフェクトに感動しなかったのか? 板野サーカスに心を奪われなかっ

          2016年4月27日の日記

          キャラクター発注メモの書き方の参考

          ちょっとスタッフ間で話題になったので、過去作品の際に書いたものを公開。 僕の場合は基本的にプロフィールを書く感じなのですが、他にもっと有効な方法があると思う。その辺、いろんな監督さんの仕事を見てみたい。 石井健・アネモネ(風花)父親イメージ 年齢35〜37歳 身長175㎝ 東京都出身。幼少期を東京で過ごすものの、中学校の陸上部の合宿中に東京に出現したエウレカセブンによって疎開を余儀なくされる。その際に両親兄弟は死亡。 親族のいる鹿児島県ニライ島に疎開した後、同島の高校を

          キャラクター発注メモの書き方の参考

          『15時17分、パリ行き』に関する2018年2月8日の感想

          役者が演じる虚構をフィルムに定着させるのが映画だとするならば、実話を基にした内容で、その当事者が本人役で出演し、かつその幼少期を子役が演じるという現実と虚構の境界線を飛び越えた作品が現れたときに、果たして一体我々はどのような判断を下すべきだというのだろうか。 映画とは「構成する」「文章化(脚本化)する」「フレーミングする」「時間を切り取る(撮影する)」「編集する」「効果音をつける」などという、何らかの人為的・作為的な行為の結晶として存在していて、これは逆説的に言えば、人為的

          『15時17分、パリ行き』に関する2018年2月8日の感想

          2018年2月6日の日記

          以前、この世に生まれなかった作品を作っていた頃に、某自動車メーカーのデザインスタジオの方々とお仕事をさせてもらう機会があったのですが、その時に感じたのが基幹産業である自動車メーカーのデザイナーさんたちの恐ろしいほどのコンペを勝ち抜くことに対する凄まじい貪欲さで、自分のデザインではない作品に対する講評にも真摯に耳を傾け、それを次の自分のデザインに「必ず」入れ込んでくることを目の当たりにした時に、講評という行為の責任の重大さに恐ろしさを感じるようになりました。 と同時に自動車と

          2018年2月6日の日記

          6年前の11月8日の日記

          ・SFロボット物で一番重要なのはロボットのデザインではなく、ロボットが存在していておかしくないインフラストラクチャーの想像・構築なのだけれども、その想像・構築に対する理解が著しく低いのは、ロボットアニメというジャンルが(その成り立ちから)内包している悲劇なのではないかと思う朝。 ・結局のところインフラストラクチャーに対するリアリティを構築せずに済む現代劇にアドバンテージが存在する中、それを覆すだけの何かを発明しなければ全くを持って勝ち目は存在せず、またその想像・構築について

          6年前の11月8日の日記

          6年前の11月4日の日記

          ・映画とファシズムの親和性について、リーフェンシュタールの例を挙げるまでもなく高いものであるのは、映画や映像についての教育を受けた者にとって基礎中の基礎であるけれども、それについてどれだけの者がリアリティを持って考え、捉えているか、時々怪しく思える瞬間があるといえばある。 ・映画や映像とは「光と音の刺激の集合体によって視聴する者の感情を揺さぶる装置」であり、その刺激とは送り手が意識するしないはさておき「暴力」となりうるものでもある。暴力はときに暴力を誘発し、それが取り留めも

          6年前の11月4日の日記

          9年前の11月3日の日記

          恐らく無意識なのであろう差別発言や、単なる自己承認欲求を満たすためだけに行う、自分と異なる意見に対する攻撃を目の当たりにするたびに、心底うんざりする。無意識っていうくらいだから、たぶん気づいていないか、もしかしたら自己正当化しているのだろう。 言い負かせば世界が変わるなら、世界は何度も変わってるんじゃないかと思うのだけれども、実際に変わっていないということは、言葉遊びだけでは世界は変わらないってことじゃないかな。いや本当は変わってなんか欲しくなくて、言葉遊びで充足してるのだ

          9年前の11月3日の日記

          3年前の日記

          写真を元にしたレイアウトが当たり前になった現代アニメにおいて、果たして人の想像力を元にしたレイアウトがそれを超える事が出来るのであろうか。 写真加工技術による世界観の構築という根幹の想像力を現実に委ねる事に対する敗北感と、そう言った敗北感を発生させるチャイルディッシュな万能感が自己満足的欺瞞に満ちたものである可能性を孕んでいる事を理解しながらも、しかしそこにしか活路を見出せない現状において、しかし我々に残された時間は足らず結果的には敗北せずに何とか引き分けに持ち込むしかない

          3年前の日記

          2年前の日記

          目が覚めたら1985年にタイムスリップしていた、という夢をみた。 彷徨ったどこか見慣れた街は、活気があるけどどこか寂しく、時折り過去の文化に戸惑う(プルトップとか)エピソードを挟みながら「再び寝たら2020年に戻れるかもしれない」というテーマに収縮して行ったけど、その時自分を強く動かしたのは「過去なんかに戻りたくない、居続けたくない、現代に戻りたい」という強烈な思いだった。 目が覚めたら2020年だった(当たり前だ)けど、戻れて本当に良かったと思った。と同時に恐らく現代は

          2年前の日記

          4年前の日記

          EP8は気に入らないところも沢山あるんだけど、ルークのエピソード全てに染み入るものがあって、それが故に作品そのものを受容するという気分になっていった。ヨーダとの再会と会話、そして最後の二重太陽を見つめるルークの姿には、つい自身に置き換えてしまう瞬間があり、同時にベンやレイとのやり取りに先人としてやるべきであろうことの示唆を感じた。 たぶんこのEP7~9の物語はベン(カイロ・レン)の話なのだろうけれども、あの情けない表情と身体を持つベンは先人から見た僕らであり、僕らから見た後

          4年前の日記

          ボツ企画『23プライマル(仮)』

          テレビシリーズの企画を考えてくれと言われて書いたもの。確か2013年ごろだけど、元になったのは更に遡って2000年頃に携わったオリジナルアニメの企画の構造で、それからインスパイアされている。上手くいくかなと思ったけれど、夢ばかり語られて実作業はどうするのかと問い合わせたら連絡が来なくなった。 『23プライマル(仮)』 企画原案 文・京田知己 (名称および設定は全て仮のものです) ■物語概要 時の止まった世界で、愛する者を失い、心を彷徨わせている男がいた。 享楽に

          ボツ企画『23プライマル(仮)』