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4月26日 「日本=技術立国」はすでに幻想?

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための問いはこちら。

→過去数年、日本人のノーベル賞受賞者ラッシュがあった。一方で特許や研究開発費などを諸外国と比べると将来不安になる。日本が「技術立国」としてその存在を維持するにはどのような手を打つべきだろうか?


世界知的所有権機関(WIPO)が2000年に制定した、世界知的所有権の日(World Intellectual Property Day)です。
1970年のこの日、「世界知的所有権機関を設立する条約」が発効し、同機関が発足したことに因みます。

知的所有権。
国としても重要な分野として取り組んでいますし、当然企業としても研究開発の上、特許取得などを通じて守ろうとします。

実際、どれくらいの特許が申請されているのでしょうか?
特許庁が公表している「特許行政年次報告書2021年版」の「出願年別でみる特許出願・審査請求・特許登録等の推移」によると、特許の出願件数は2006年から減少傾向ですが、特許の登録件数は2006年の16.3万件から2014年18.5万件と増加しています。これは、出願するときに厳選することが浸透していることを示します(下図)。


次に、世界の特許の出願・登録件数の推移を見てみましょう(下図:出典同)。共に増加を続けており、2010年と2019年を比較すると約1.6倍以上になっていることが分かります。


グローバルな時代ですので、日本だけ特許が認められても海外市場で知的財産が保護できない場合があります。一方で、各国に個別に出願するのは大変な手間がかかります。
それを解消するために、PCT国際出願制度というものがあります。これは、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願のことで、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによってPCT加盟国である全ての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です(特許庁HP)。

そのPCT国際出願制度を使った国別の出願件数の推移がこちら。中国が急激に増えており、日本を上回ったことがわかります(出典同)。


ここまで特許出願件数、というの面を見てきました。
気になるのはの面です。

特許を出願するに至るには、多くの場合研究開発があるでしょう。文部科学省の「科学技術指標2021」に「主要国の研究開発費総額の推移」のデータがありましたのでご紹介します(下図)。


アメリカは1位を維持しているものの、中国の伸びは突出していることがわかります。ドイツと韓国、EUとも目立たないですが増加していますので、日本の横ばいが際立ちます。

研究開発費を投入した成果の1つが論文でしょう。
国別論文数上位25ヵ国の推移を見てみると(下表)、これをみると、日本は論文数では2位→5位→5位と後退しているものの一定の存在感があります。研究開発費を急増させていた中国は、9位→2位→1位とその効果が伺えます。

とはいえ、はどうでしょう?
質をみる1つの手法に論文がどれだけ他の論文に引用されているか(補正論文数)という指標があります。以下は引用数がTop1%の論文の数の推移ですが、日本は6位→9位→12位となってしまっています。
アメリカは常に1位というのはさすがですが、中国も16位→4位→2位と伸ばしています。

アメリカが中国を意識するのも分かりますね。

さて、こうして蓄積した知的財産ですが、企業にとって肝心なのはどれだけ稼げるか、です。
マクロでの目安のひとつとして、貿易収支があります。
医薬品、電子機器、航空・宇宙の3つの産業を「ハイテクノロジー産業」、化学品と化学製品、電気機器、機械器具、自動車、その他輸送、その他の産業を「ミディアムハイテクノロジー産業」と定義し、それぞれについて、貿易収支比の推移データ(「主要国におけるハイテクノロジー産業の貿易収支比の推移」)がありましたのでご紹介します(下図)。




これをみると、1990年代前半は日本の春、だったんですね…
現在は「ハイテクノロジー産業」ではマイナス、つまり、貿易収支赤字、になっています。「ミディアムハイテクノロジー産業」では、まだ日本の優位は健在です。


「ジリ貧」感を感じてしまうチャート、ですよね…
なんとなく過去の成功体験が偉大すぎて大きく方向転換できないまま、過去の遺産を食い潰しているようにも見えます…

→過去数年、日本人のノーベル賞受賞者ラッシュがあった。多くの技術開発や発見がその瞬間よりも一定期間経過後に評価されることを考えると、不安になる。過去分も含めた特許を最大限活用すればまだ競争力に繋げることは可能だと思われるがどのような方法が考えられるだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。

こうした「頭の体操」ネタを一昨年7月から続けています。
だいぶ溜まりました。よろしかったら見てみてください。



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