記事一覧
ショートショート「百足」
金曜日の夜、俺は仕事終わりに彼女に連絡をする。いつものルールだった。そうしないとこちらが出るまでずっと電話が鳴り続けることになる。
彼女は美人だ。大学時代に一目惚れをし、俺の熱烈なアプローチで付き合って2年が経とうとしていた。少し俺にべったりしすぎなところもあるが。
週末なので彼女のアパートに向かう。毎週末泊まりに行くのが習慣だ。彼女と過ごすのはとても楽しいのだが、そろそろ我慢できないレ
ショートショート「娯楽」
缶を一杯飲み干した。ぼんやりとした視界。ぼんやりとした思考。悪いことが考えられない状態だ。頭がくらくらとする感じさえする。けれども癖になる感覚。不思議と気持ち悪さは感じない。
夏の今にも日が沈もうとしている夕方の河原。草の青々とした臭いに加えて昼の暑さが残った生暖かい空気に包まれている。
音質のいいスピーカーから音楽を爆音でかける。アルコールを飲み普段より気が大きくなり大胆になった僕と友人た
ショートショート「電卓を持った男」
「君みたいに勉強が好きで学問の世界に足を踏み入れても良い仕事につけなくなっちゃうのか、勉強しても幸せになれんな!学生時代は遊ばんとな!がはは」
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「よし、とりあえず今日売れた数が仕入れ全体に占める割合を計算したいから電卓を持ってきてくれ」
「はい、どうぞ」
「...あれ、割合の計算ってどうすればいいんだっけ」
ショートショート「溺死」
酒がとても美味しい。20歳になるまで酒を飲んだことがなかった(法的に当たり前のことだが)僕は、成人した直後にウイスキーを飲んで上機嫌になったのちふらふらになり眠りに落ちた。その日から酒の持つ酩酊作用と安眠作用にすっかりハマり、試験が終わった日や大事な仕事をやり終えた日に視界がぐるぐる回るまで酒を飲むのが習慣になっていった。今では酒と10年ほどの付き合いだ。
嫌なことがあった。楽しくなりたい。そん
ショートショート「薬物」
Q王国は王の独裁統治だった。現代では独裁政権による国はかなり少なくそのような政権の寿命は短かったが、このQ王国はこの200年間内戦やクーデターなどが起きなかった。王は人柄穏やかで王の政治にはほとんど誰も反抗しなかった。厳密に言えば薬物中毒者が数十年に一度ほどデモを行ったが国家権力に捕らえられ彼らは二度と王国に姿を見せることはなかった。正常な人々は彼らの反社会的な行動を見て真似することなどなかった。
もっとみるショートショート「貨幣経済」
ブギはカネというものに興味を持った。西の果ての土地ではカネというものでモノを取引しているらしい。牛や馬や布製品や穀物を以て需要のある者同士で物々交換せざるを得ないブギのコミュニティより遥かに進んだシステム。
何としてでもカネの使われている社会を見てみたいと思ったブギは母に別れを告げ舟で大河を渡り西へ西へと歩き山を越え谷を越え、文明社会へたどり着いた。ブギは通りかかった中年の男に話しかけた。「カネ
ショートショート「輪廻転生」
青年はビルの屋上から都会の街並みを眺めていた。自殺をしようと思い立ったのだ。
彼には返済しきれない借金があるわけでも仕事で重大なミスをしたというわけでもなかった。なんとなく、死にたくなったのだ。努力して勉強をしても人並み以下の成績しか出せなかった学生時代。大学は第1志望に進学することはできなかったので就活こそは成功させようと思い大企業を多く受けた。しかし彼には大きな欠点があった。
いわゆるコ
寝る前の読書が楽しかった
まだ携帯を持たなかった中学生の頃まで、寝る前の読書が楽しみで仕方がなかった。
今のように眠る前に布団に寝っ転がるとスマホをいじくり回すという習慣はなく、(そもそもスマホは当時存在しなかった)外の世界に繋がる手段がテレビ、パソコン、本しかなかった。
遅くまでテレビを観たりパソコンをいじっていると親に怒られてしまうので布団に入り寝るまで外の世界の情報を得る唯一の手段が本であった。
その頃は本に味
大学受験に失敗したら
おはようございます。こんにちは。こんばんは。筆者のかさと申します。このnoteでは大学受験(ほんのちょっと)と大学編入について実体験に基づいた見解を書いていきます。
大学受験に失敗したらというこの時期受験生にとってはかなり嫌な、考えたくない、縁起でもないトピックですが、他の多くの人が経験していない経験をしてきたので文章にして伝えようと思ったのです。
本題にさっと入っていきますが、僕は第一志望の