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オートエスノグラフィックな何か

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オートエスノグラフィを書くための断片です。
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2023年9月の記事一覧

『剽窃(オートエスノグラフィックな何か 11)』

『剽窃(オートエスノグラフィックな何か 11)』

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ある時、送ってもらった新刊を読んで、驚いた。

一部が、すでにパブリッシュされてた辞典の原稿の中の、ゴフマンの引用の私のオリジナルだと思っていた翻訳と、そっくりそのまま同じだったから。どういうこと?と驚いたけれど、でも、そのそっくりそのままの部分の出典を見たら、元になったその人の論文は、私の部分翻訳が載った辞典より、先にパブリッシュされている。

私が自分のオリジナルだと思うものな

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『私小説(オートエスノグラフィックな何か 10)』

『私小説(オートエスノグラフィックな何か 10)』

失恋した相手に、数ヶ月経ってまた会えるようになった途端、2週連続で会いに行ってしまっていて、友だち関係を続けようとする彼女と、どうにかなりたいと思っているかは、さておき、Tジェルを開始してしばらく経ったので、いろんな気持ちに性的な衝動がミックスされて、それもあって、かなりのスピードで精神的なトランジションしてるみたいですね。

身体違和からは、これまで解離してたろうと思いますし、昔から、自分の恋愛

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『刺青・タトゥー(オートエスノグラフィックな何か 9)』

『刺青・タトゥー(オートエスノグラフィックな何か 9)』

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首に3つ目の眼のタトゥーを入れているところ。まだ途上で、これに眉毛と色を複数足してもらうことになっています。上から重ねるのに定着するのを待っている段階で、既に白眼に白いインクは入ってます。

私のタトゥーアーティストは、日本人とカナダ人のミックスのA。彼女は腕に「選ばれし家族」と日本語で彫っていて、私がChosen Familyのこと?と聞いたら、そうだと言っていました。彼女のこと

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『クイアセオリーでなくEMCA(および社会問題の社会学)に救われてきた理由(オートエスノグラフィックな何か 8)』

『クイアセオリーでなくEMCA(および社会問題の社会学)に救われてきた理由(オートエスノグラフィックな何か 8)』

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1. カテゴリーの外挿に自覚的であれ

収集したデータを分析して、それを研究論文として仕上げる、という研究活動をするのに、相互行為論的なやり方やEMCAでやっている人たちの間では、自分のジェンダーもセクシュアリティも、同時に自分のアイデンティティも、全く問題にならなかった。そのこと自体を、そんなに美味しくない飯を貪りながら思い出して、今、一番、人生の中で生きていると感じている。

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『日本版バッド・フェミニスト(オートエスノグラフィックな何か 7)』

『日本版バッド・フェミニスト(オートエスノグラフィックな何か 7)』

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1. ジェンダーを教えること自体が一つのアクティビズム

私は教員生活の間、20年近く、ずーっと学生からのトランスヘイトを浴びてきた。ミソジニーも浴びてきた。でも、それを話しても、ほとんど理解されなかった。なので、話してもしんどいので、話すこともなくなっていた。

そもそも学生時代、方々のゼミで発表しても、学会発表をしても、トランスヘイトを浴びていた。講演会をしても、同じ。トランス

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『アンチ・クイアセオリー宣言(オートエスノグラフィックな何か 6)』

『アンチ・クイアセオリー宣言(オートエスノグラフィックな何か 6)』

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*シリーズの5を前提にして書いております。

私はトランスジェンダー研究の研究者として、以下の立場に立っています。

研究者がするのは、研究。主義主張をするのは、万人の権利だが、研究者は自己主張せず、アクティビストの肥やしになるのが、あるべき姿。私は研究者として書くリサーチペーパーに、アクティビストとしての主張を混ぜ込まない。

研究結果がしたい主義主張と同じなら、怖い。それが両立

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『学問の政治で私を潰すな、あるいはQuriosity(オートエスノグラフィックな何か 5)』

『学問の政治で私を潰すな、あるいはQuriosity(オートエスノグラフィックな何か 5)』

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私は政治家にも外交官にも、なるつもりはない。むしろ拒絶する。世界を変えようとする学問の政治とは、自らを切り離すことにする。私がしたいのは、調査研究。調査研究をすること、それ自体に、そもそも十分な政治性が存在する。

1990年代末、日本ではトランスジェンダーや性同一性障害ということばが、アカデミアでもほとんど通じない時代に、調査研究を始めて、社会学の分野で科学として、きちんと認めら

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『江原由美子vsジュディス・バトラー(オートエスノグラフィックな何か 4)』

『江原由美子vsジュディス・バトラー(オートエスノグラフィックな何か 4)』

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バトラーの『ジェンダー・トラブル』は、マスターの一年生の時のゼミ読み、みんなで困り果ててました。半年かけて読んでもわからなくて、師匠の江原さんも困り果ててましたが、そんなバトラーって、ほんとにわかりやすいんですか?

ジェンダークイアというタームを使い出した、リキ・ウィルチンスは、バトラーを4回だったか読もうとしたけど、毎回、嫌んなって壁に投げつけて捨ててたと、著作の最初に書いてい

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