ニンニ「100のスキより、1のコメント」

作家を目指す図書館員です。 netoはSNS特有の、「スキ」を押すことで意思疎通が終了…

ニンニ「100のスキより、1のコメント」

作家を目指す図書館員です。 netoはSNS特有の、「スキ」を押すことで意思疎通が終了している記事が多いと感じます。 せっかく表現をしても、ただ「スキ」だけで完結してしまっては勿体ないと感じています。「100のスキより、1のコメント」を目標にしていきます。

最近の記事

孤独は最も付き合いやすい友達である。

 執筆中の長編小説で、孤独をテーマにした章を書いている。  ヘンリー・ディヴィッド・ソローいわく、「孤独は、最もつきあいやすい友達である。それなのに、孤独はたいてい嫌われる。自分の孤独に手を差し伸べよう」と言っている。  私には友達がほとんどいないので、孤独とは昔からのお友達である。誰かの話を聞くのはそれほど嫌いではないけれど、深い付き合いをするのには抵抗がある。数少ない友達とも、二ヶ月に一度くらい会えばそれで満足する。  執筆中の孤独も、ネガティブな方向に持って行こう

    • 拝啓 noteの新しい使い方してみます。

       これまでSNSを始めても、どうにも長続きしない。つぶやき、エッセイ、感想、レビュー、小説を書いたところで、そもそも反応というものがない。(僕の文章が悪いのもあるけれど、発信したところで誰も見ていないことが多い)  たまに〝イイネ〟〝スキ〟が付くけれど、それで本当に評価されたのかもわからない。そもそも評価をされたいから僕らは記事を書いたり、作品を作っているのだろうか?   もちろん自分が書いたり、作ったものに〝スキ〟が付くのは嬉しいことで、とても励みになるし大切なことは間

      • 100日後に死ぬ父。100日目。

         目が覚めて居間に行くと、いつもの朝だった。母は台所でお弁当を作ってくれていて、何も変わらない風景でなんだかほっとした。僕は昔から心配しすぎる癖があった。物事の最悪の状況をいつも想像して、かってに不安な時間を人よりも多く過ごしてしまうのだ。だから今回も僕の悪い癖が出てしまったのだと思った。  天気は快晴。そろそろ夏がやってきそうな暑さで、梅雨が明けて久しぶりに清々しい朝だった。  朝ごはんを食べ、仕事に行く支度をしていると、電話が鳴った。時刻は8時過ぎで、こんな朝早く電話がな

        • 100日後に死ぬ父。99日目。

           仕事が休みの日は何もしたくなくなるけれど、今日は特に何もしたくなかった。頭の中では常に父のことばかりで、読書をしていても文字の上をただ視線が流れていくだけだった。  今日の夕方、伯父さんと母が父の病室へ行くことになっている。そこで父にお金のことを聞きだし、本当にもう借金がないかどうかを問い詰める。逃げ場のない病室で、父が伯父さんと母に怒られているところを想像するだけで胸が痛かった。父を可哀想とは思わない。ただ父が心配なのである。  憂鬱な気持ちでお昼が過ぎたころ、父が家に

        孤独は最も付き合いやすい友達である。

          100日後に死ぬ父。98日目。

           今日は伯父さんと電話で話をした。僕はまず伯父さんに謝り、後日祖父にも謝りに行くことを伝えると、伯父さんは「すべてアイツが悪いのだから、謝る必要はない」と言った。僕はそんなアイツの息子なので、なんだか僕も怒られているように感じた。  僕にはまだ父に対して怒りの感情が芽生えてなかった。どちらかというと悲しい気持ちばかりが増えて、これからどうやって父と接すればいいのか分からなかった。もしかすると、僕は連帯責任のような気持ちになっているのかもしれない。伯父さんはお金のことは気にしな

          100日後に死ぬ父。97日目。

           夕方に仕事を終えて家に帰ると、ちょうど母もどこかから帰ってきたところで、夕ご飯の準備はまだできていないままだった。冷蔵庫の中を見ると、すぐに食べられそうなものが無かったので、今夜は外で何か買いに行こうか考えていると、母から「話したいことがあるから座って欲しい」と言われた。母が何を話すのかはわからなかったけれど、雰囲気から察するに、なにか悪い話なのは明らかだった。    悪い話は、やはり父のことだった。  今日母が伯父さんの家に行くと、父に関するある事実を知らされた。それは、

          100日後に死ぬ父。96日目。

           今日も糖尿病の授業があり、母は午前中に病院へ行った。僕は仕事が休みだったので、居間のソファで横になって読書をして過ごした。三十ページほど読み進めたところで僕はうとうとしはじめて、今日の夕ご飯は何を食べようか考えながら、いつの間にか眠りについた。  昼過ぎ、病院から帰ってきた母に起こされた。同時に父の声が聞こえたので驚いて起き上がると、やはり家に父が居た。どうして家に居るのかを聞くと、いろいろと必要な物を取りに一時的な帰宅の許可を貰えたとのことだった。久しぶりに父が家に居る

          100日後に死ぬ父。95日目。

           母から聞いた話だけれど、糖尿病の授業中、父は真面目に話を聞いていたらしい。ちゃんとメモを取り、気になることは質問もしていたとのことだった。母が居たからちゃんと先生の話を聞いていたともいえるけれど、それでも父が前向きになりつつあるのはいい事だった。  母はこれから料理が大変そうだと言っていた。食事制限をしていく父も大変だけれど、毎日献立を考え、気を付けながら料理を作る母はもっと大変である。  近所に住んでいる糖尿病のお爺ちゃんですら、奥さんに隠れて甘いものを食べていたので、誘

          100日後に死ぬ父。94日目。

           今日の検査で父の糖尿病の数値がちゃんと下がっていたので、明日からは色々と糖尿病の授業がはじまる。母もほぼ毎日病院に行くことになるので大変である。けれど父ひとりで授業を受けさせるのは心配なこともあり、ちゃんと母が付いていないといけない。  なにはともあれ父の入院は順調に進んでいるのは良いことだった。糖尿病や父の借金発覚などが続いて、僕も不安ばかりだったけれど、とにかく悪い方向へは進まなくてよかった。  父が入院したことは、さすがに伯父さんに言わないわけにもいかず、入院した次

          100日後に死ぬ父。93日目。

           今日は父の病室に行った。検査以外の時間はとても暇そうなので、本屋でクロスワードパズルを買って差し入れをした。父は借金が発覚してからはゲームを自粛しているようだから、クロスワードパズルくらいなら多分セーフの部類だろうと思った。  頼まれていた手帳と筆記用具と一緒にクロスワードを渡すと、父は思っていたよりも喜んだ。よっぽど暇なようである。手帳と筆記用具はこれから日記を書くために使うらしい。過去に入院した時も日記を書いていたけれど、三日坊主で終わっていたから今回も続くかは分からな

          100日後に死ぬ父。92日目。

           今日の夕飯はマクドナルドでテイクアウトした。今後、父の前ではハンバーガーは食べにくくなるので、食べられるときに食べておくことにした。  僕はダブルチーズバーガーのセット、母は照り焼きバーガーのセットを食べた。久しぶりに食べるジャンクフードは美味しく、いくら体に悪いからとはいえ、それでも食べてしまうのがマクドナルドである。  僕が小学生の頃は、町にマクドナルドはまだなかった。一番近い店でも車で一時間半もかかるところにあり、子供の頃はマクドナルドに行くことは、我が家でちょっとし

          100日後に死ぬ父。91日目。

           父の入院3日目。夕方に僕と母で父の病室に行った。  入院中、父はとても暇そうだった。病室にはWi-Fi環境がないので、スマホで暇をつぶすことは出来ないらしい。僕は父に小説を読むことを進めたけれど、あまり乗り気ではなかった。やっぱり父は本を読むのがまだ苦手らしい。  父が過去に入院していた時は、携帯ゲーム機で暇つぶしをしていたけれど、さすがに今は借金の反省中なので、そういった娯楽を父は自粛していた。だから暇だと呟いても、携帯ゲーム機を持ってきて欲しいとは言わなかった。  今日

          100日後に死ぬ父。90日目。

           夕方、父からメールがきた。家から自分の枕を持ってきて欲しいとのことで、父の様子を見るついでに僕が届けに行くことにした。  父の病室は幸いなことに個室だった。最初は相部屋にするつもりだったらしいけれど、相部屋がどこも満室だったので、運よく個室を用意してもらえたとのことだった。  病室に入ったとき、父はちょうど夕ご飯を食べているところだった。僕は病院食をあまり見たことがなかったので、父の夕ご飯を観察してみると、絵に描いたような健康的な献立で、意外とどれも美味しそうだった。  父

          100日後に死ぬ父。89日目。

           午前中、父は紹介状をもって病院に行った。今日も朝から一言も喋ることは無く、父は静かに家を出ていった。  精神的に落ち込んではいるけれど、糖尿病の症状は体重が減ること以外、特にまだ出ていなかった。そのせいで父が本当に糖尿病なのか怪しかったけれど、それも今日でちゃんとわかりそうである。案外父が大袈裟に話していただけで、本当はそこまで進行していない可能性も少しはあった。  けれど昼過ぎに父から、今日から即入院が決まったという連絡があった。やはり前回の診断で「立っていられるのが不思

          100日後に死ぬ父。88日目。

           昨日、父と母の間でどんな話し合いが行われたのかは分からないけれど、とにかく二人は離婚しなかった。もちろん父が許されたということはなく、ただ離婚はしないということ以外は、二人の様子は昨日と何も変わってはいなかった。父は静かに落ち込み、母は静かに怒っている。父と母の険悪なムードには慣れているはずだったけれど、今回はこれまでと比べ物にならないくらいに最悪な状態だった。  今日は父の声を一度も聴くことはなかった。それほど父は静かに過ごし、夕ご飯を食べ終わると直ぐに部屋に戻って眠った

          100日後に死ぬ父。87日目。

           今日は病院に行く日だったけれど、父の借金についての問題を解決するため、急遽延期となった。  まず初めに、母は父をつれて消費者金融へと行った。そしてこつこつと貯めておいた貯金から、父の借金を全額返済した。母はもう父を信用していなかったので、返済が済むまで常に父のとなりにいた。僕は実際にその場を見たわけではないけれど、想像するだけでとても父が恥ずかしかった。  150万円の返済が済むと、次は父のツケが残っている飲み屋を一軒一軒回り、ツケの支払いと謝罪をした。どのお店の人もいい人