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100日後に死ぬ父。89日目。

 午前中、父は紹介状をもって病院に行った。今日も朝から一言も喋ることは無く、父は静かに家を出ていった。
 精神的に落ち込んではいるけれど、糖尿病の症状は体重が減ること以外、特にまだ出ていなかった。そのせいで父が本当に糖尿病なのか怪しかったけれど、それも今日でちゃんとわかりそうである。案外父が大袈裟に話していただけで、本当はそこまで進行していない可能性も少しはあった。
 けれど昼過ぎに父から、今日から即入院が決まったという連絡があった。やはり前回の診断で「立っていられるのが不思議」という話は本当だったようで、今日の診断でも先生から「立っていられるのが不思議」と言われてしまったらしい。
 即入院の連絡を受けてからは大変だった。僕は仕事でいなかったので、母はひとりで入院に必要なものを準備して病院に向かい、先生と今後の事について話をしなければならなかった。もちろん父と母の雰囲気は回復していないので、病院でも二人は必要最低限の会話しかしなかった。
 今回の入院は、糖尿病の数値を下げることと、退院後の生活についての指導が目的だった。糖尿病の数値は前回よりあまり下がっていなかったので、やはり食生活についてはプロの指導が必要だった。他にもインスリン注射を自分で打つ練習もするらしく、父の糖尿病はやはりかなりやばかったのだと実感した。
 夕ご飯は母と二人で食べた。母は病院で聞いたことを話しつつ、ほとんどは父の愚痴ばかり話した。父は即入院もある程度はショックだったようで、今朝よりもさらに元気がなくなっていたらしい。元気のない父を先生や看護師が心配して励ましていたらしいけれど、原因は糖尿病以外にもあることは父も母も言えなかった。
 入院は経過もみつつ二週間を予定していた。まずは数値を下げることが目標で、これから父の努力が始まるわけである。
 即入院は驚いたけれど、今の父と母の雰囲気からして、実質別居状態になるのは悪くないことだと思った。二週間もあれば、少しは二人の雰囲気も回復するかもしれない。

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