100日後に死ぬ父。87日目。

 今日は病院に行く日だったけれど、父の借金についての問題を解決するため、急遽延期となった。
 まず初めに、母は父をつれて消費者金融へと行った。そしてこつこつと貯めておいた貯金から、父の借金を全額返済した。母はもう父を信用していなかったので、返済が済むまで常に父のとなりにいた。僕は実際にその場を見たわけではないけれど、想像するだけでとても父が恥ずかしかった。
 150万円の返済が済むと、次は父のツケが残っている飲み屋を一軒一軒回り、ツケの支払いと謝罪をした。どのお店の人もいい人なので、誰も怒ってはいなかったらしいけれど、それでもそれに付きそう母はとても恥ずかしかったと思う。
 夕方までに借金の返済とツケの支払いを終わらせ、ふたりは静かに帰ってきた。夕ご飯はだれも一言も喋らず、本当にお通夜のようだった。
 食べ終わって僕が部屋に戻ると、居間では父と母の話し合いが始まった。どんな事を話して、どんな結論になるのかはわからないけれど、もうすでに僕が話に入ることはないと思った。母が離婚したいのなら離婚すればいいのだし、母のこれまでの苦労を考えると、僕は父の味方にはなれなかった。本当に自業自得である。
 けれどもしも離婚が成立したら、その後の父の生活は心配だった。父はすべてにおいて母に頼りっきりなので、父が自分だけで暮らしていけるとは到底思えない。しかも糖尿病の治療や、自営業をどうするかという問題もある。
 僕は父の印象というものが、少しずつ変化していることに気が付いた。いくら父親でも、ここまで母を困らせているのを見ると、本当にどうしようもない父親なのだと認識してしまうのである。
 話し合いは深夜まで続いていて、終わる様子はなかった。僕はベッドに横になり、これからどうなるか想像し、不安になりながら、いつの間にか眠ってしまった。

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