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100日後に死ぬ父。95日目。

 母から聞いた話だけれど、糖尿病の授業中、父は真面目に話を聞いていたらしい。ちゃんとメモを取り、気になることは質問もしていたとのことだった。母が居たからちゃんと先生の話を聞いていたともいえるけれど、それでも父が前向きになりつつあるのはいい事だった。
 母はこれから料理が大変そうだと言っていた。食事制限をしていく父も大変だけれど、毎日献立を考え、気を付けながら料理を作る母はもっと大変である。
 近所に住んでいる糖尿病のお爺ちゃんですら、奥さんに隠れて甘いものを食べていたので、誘惑に弱い父が甘い物を我慢することは絶対にできないと思う。そう考えると食べたいものが食べれないというのは本当にストレスが溜まることだと思った。今はまだ大人しい父だけれど、今後ストレスが溜まった時にどういった行動をするのかが怖かった。父は感情が高まると無鉄砲に解決する癖があるので心配である。
 特に父は物に当たることが多い。不機嫌な時に機械が故障すると、とりあえずハンマーで乱暴に叩いて直そうとする癖がある。さすがに精密機械はハンマーでは叩かないけれど、我が家の古い機械の表面などは凸凹である。
 父がまだ若い時は、怒ると部屋の壁を殴って穴を開けたりもした。我が家で不自然な位置にポスターが貼られてあるのは、父が開けた穴をを隠す為である。
 けれど最近の父は、体重が減って腕も細くなり、もう壁に穴を開けることはできないと思う。そうかんがえると、まだ壁に穴を開けられたほうがいい気もするのも不思議である。  

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