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100日後に死ぬ父。90日目。

 夕方、父からメールがきた。家から自分の枕を持ってきて欲しいとのことで、父の様子を見るついでに僕が届けに行くことにした。
 父の病室は幸いなことに個室だった。最初は相部屋にするつもりだったらしいけれど、相部屋がどこも満室だったので、運よく個室を用意してもらえたとのことだった。
 病室に入ったとき、父はちょうど夕ご飯を食べているところだった。僕は病院食をあまり見たことがなかったので、父の夕ご飯を観察してみると、絵に描いたような健康的な献立で、意外とどれも美味しそうだった。
 父は「見た目より味が薄くて美味くない」と言っていたけれど、ちゃんと全部残さず食べきった。食べている間はこれからの入院生活のことや、退院してからのことなどを聞いて、なんだか久しぶりに父と沢山会話をしたような気がした。もちろん母や借金についての話はしなかった。父はこれから頑張らないといけないのだから、もう気分を落とすようなことはさせたくはなかった。
 久しぶりに父と話すと、僕が思っていたよりも元気になりつつあって、やはり母と距離を取っている状態が今は良いようである。
 
 家に帰ると、母が父の様子を聞いてきた。母の言葉にはまだ怒っている感情が見え隠れしていたけれど、それでも父のことは心配なようだった。父と母がこれからどうなるかは分からないけれど、少しずつ良い方向に進めばいいと思った。


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