2022年3月の記事一覧
短編【ストレス発散秘密倶楽部】小説
私は大手デパートのクレーム処理課に勤めて15年になる。毎日毎日さまざまなお客様のクレームを私は対処している。
クレームと言っても会社をより良くする為の材料が隠れているので、おざなりには出来ない。クレーマーとは私にとって会社を、いや、私自身を成長させてくれる有難い存在なのだ。だが常識では考えられないクレームを言いつけてくるお客様もいる。
この前も大福の中に金属が入っていたというクレームがあったが
短編【理性の扉をこじ開けて】小説
人間と云うものは、キッカケが有れば如何ようにも変われる。逆に言えば、キッカケが無ければ変われない。変わりたいと思っている人間はそのキッカケを待ち望んでいるのだ。私の妻の様に。
妻を四文字熟語で表すとしたら『質素倹約』または『簡素清貧』。地味で慎ましく、身を飾らずに貧しくても清らか。私は未だかつて彼女の口からモノが欲しいと聞いたことが無い。
そんな妻に、お昼に放送されている『昼ドキッ!情報局』と
短編【混ぜるな危険】小説
カッちゃんには内緒だけど私はピルを飲んでいる。だって、カッちゃんは子供が大好きなんだもん。
カッちゃんと結婚する前に私は姉のアパートにカッちゃんを連れて行った事がある。
その時、姉は赤ちゃんを生んだばかりで、その生まれたての姪っ子を見に行くついでにカッちゃんも連れていった。カッちゃんは赤ちゃんにメロメロでずっと赤ちゃんと遊んでいた。帰りの車の中でもずっと赤ちゃんの話をしていた。
きっと私たち
短編【味覚障害】小説
「ちょっと、痩せたんじゃない?」
佐和子は義理の弟、義光の少しやつれた顔を見て言った。
体調を崩したという連絡があり、義理の姉である佐和子が義光のアパートまで様子を見にきたのだ。
佐和子がわざわざ義光の様子を見に行ったのは、義光が独り者であるという理由もあるが、もう一つ、ちょっとした不安があったからだ。
その不安とは義光がこのアパートに十日前に引っ越しをしてきたという事。
とにかく家賃の安い