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短編【混ぜるな危険】小説

カッちゃんには内緒だけど私はピルを飲んでいる。だって、カッちゃんは子供が大好きなんだもん。

カッちゃんと結婚する前に私は姉のアパートにカッちゃんを連れて行った事がある。

その時、姉は赤ちゃんを生んだばかりで、その生まれたての姪っ子を見に行くついでにカッちゃんも連れていった。カッちゃんは赤ちゃんにメロメロでずっと赤ちゃんと遊んでいた。帰りの車の中でもずっと赤ちゃんの話をしていた。

きっと私たちの間に子供が出来たら、カッちゃんは私をそっちのけで赤ちゃんにメロメロになるに違いない。だから私はピルを飲んでいる。結婚して5年になるけど私はまだまだカッちゃんとラブラブに過ごしたい。

そんな大好きなカッちゃんの為に今日は朝から大掃除だ。大好きなカッちゃんはお風呂が大好きだから、お風呂をピッカピカにしてあげる。タイルに洗剤を撒いて力いっぱいゴシゴシ洗う。前髪を少し切っただけで、「あれ?髪型変えた?」って言ってくれるカッちゃんだから、ピカピカに綺麗になったお風呂にも直ぐに気づいてくれる筈。

その後はカビ取り剤を撒く。タイルとタイルの隙間のカビや排水孔のカビをみんな洗い流す。ちょっと一生懸命になりすぎたせいか少しクラクラしてきた。なんだかキツイ臭いがするな、と思ったら私はその場に倒れてしまった。

気が付いたら私は病院のベットの上だった。

「だいじょうぶ?」
「うん。あれ?どうしたの、私」
「風呂場で倒れてたんだよ。たまたまお義姉さんが遊びに来てくれたから助かったけど」
「そう」
「混ぜるな危険」
「え?」
「お前、混ぜたら危険な洗剤を使って風呂掃除してただろ」
「そうなの?」
「そうなの、じゃないよ~。塩素ガス中毒で、お前死にかけたんだぞ~。お前にもしもの事があったら、俺、どうしたらいいんだよ~」

ごめんね、カッちゃん…。カッちゃんはもの凄く心配してくれた。そして、物凄く甘いキスもしてくれた。


混ぜるな危険かぁ。

寂しくなったらまた使っちゃお。

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