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下から見る雨粒

いつもの帰り道。雨がそぼそぼ降りはじめたけれど傘はなくってそのまま下を向きながら歩いていて止まった赤の横断歩道で上を見上げた。さっきよりも少し量が多くなった雨粒が上から落ちてきて、下から見ると線になったり点になったりそのまま目の中に落ちてきたり。
傘をささないで雨を下から見るなんて、久しぶりだったような気がしてはっとして、そのまま上を見続けていたら少し首が痛くなって自分の体がこれまでの体じゃなくていまの生活に馴染んだ頭と指先しか動くことができないようになっているんだと思ってがっかりして、それでも上を見ていると人が私にぶつかって、気づいてみると信号は青になっていて赤信号を待っていた人たちはどんどん前に歩き出していて、私は邪魔だったんだとはじめて気づいた。

歩き始めても、10歩歩いたら上を見て、しばらく歩いたらまた上を見たらの繰り返しだけれど、東京に住み始めてのしばらく経った私は反対側から歩いてくる人たちを目の端で捉えていてぶつからないように避けて歩けているようで優越感に浸りながら上を見ながら歩いていたけれど、きっと反対側から歩いてくる人は上を向いて歩いている私を普通の人とは見えずに警戒しながら距離を保って歩かなければいけない対象として近寄らないように警戒していたからきっと私は誰にもぶつからずに上を見ながらどんどん歩けていたのだと思う。

エスカレーターみたいな東京の歩道を歩いた後に彼女が思ったこと。

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