一難去ってまた一難? 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。二〇五
熊野から吉野、岩山を越えて。
こんにちは。今日も午後から「ことの葉綴り。」に向かいます。
天孫の御子の伊波禮毘古の苦難続きの東征。
地元の豪族の攻撃を受け、兄を失い、“人生(神生)”のどん底を
経験します。
けれど、高天原からの助けと、地上の新たな出会いにより
難を逃れることができました。
そして神の使いの八咫烏を先導にして、伊波禮毘古たちは熊野から吉野へと、仲間を増やしながら大和を目指して進んでいきます。
吉野の山へ入ったときです。
岩と岩が連なる山肌から、ゴォゴォゴォっと音がしています。
見てみると、岩が少しづつ動いて隙間ができて、そこから、尻尾のある獣の皮を着た人が、岩を手で押し分けながら現れたのです。
そなたは誰じゃ?
伊波禮毘古の問いに、勇猛そうな人は、頭を垂れてこう答えます。
私は国つ神で、名は石押分之子(しはおしわくのこ)といいます。
今、天つ神の御子さまがおいでになると聞いて、お出迎えに参りました。
今日より、私たちも、お仕え致しまする。
石押分之子も、岩穴を住居にしていたこの吉野の土地のもので、国巣(くず)の祖先にあたります。
岩穴に暮らすものがいるほどの深い山。
八咫の烏の導きを得ながらも、この吉野の深い山の道なき道の険しい山を進んでいきます。
今も紀伊半島の熊野から和歌山県三重県、奈良県には、
山々が連なる“陸の孤島”とも言われますよね。
その険しい山中を、八咫烏がしっかりと道案内をして、
地元の国つ神たちとの出会いもありながら、
少しずつ進んでいったのでしょうね。
やがて、吉野から山を越えて、北東へ向けて北上して、
今度は宇陀(奈良県宇陀市)に入ったのでした。
天孫の使者、八咫烏
この宇陀の地には、兄宇迦斯(えうかし)と、弟宇迦斯(おとうかし)という兄弟がいました。
そして、伊波禮毘古たちの行く手を防いでいるようでした。
そこで伊波禮毘古は、神の使いである八咫烏を、この兄弟に遣わせました。
八咫烏は、一行よりも一足先に、大空を羽ばたいてゆき、
兄宇迦斯(えうかし)と、弟宇迦斯(おとうかし)の屋敷へと飛んでいき、こう告げました
「カア、カァ、兄宇迦斯、弟宇迦斯との。
わたしは、天つ御子の使いのものである。今より、天孫の御子の伊波禮毘古さまがこちらにお出でになる。
そなたたち、兄弟に聞く。
汝ら、御子に従いお仕えするか? 否か? どうじゃ、カアカア」
兄宇迦斯の反抗
八咫烏の話を聞いていた、兄宇迦斯(えうかし)と弟宇迦斯(おとうかし)ですが、兄の兄宇迦斯は、敵意をむき出しにしました。
なんだと! 天つ神の御子が、我らに従えだと?!
ふん、そんなことを聞くわけにはいかんわ!!
これが、その返事よ!!
そういうと、八咫烏を脅かすために、いきなり弓矢を放ったのです。
脅かされた八咫烏は、その弓を避けて空高く舞い上がりました。
兄宇迦斯が放った矢は、空中で落下していきます。
そこからその地は、訶夫羅前(かぶらざき)と呼ばれるようになりました。
ふん! 逃げよったか!!
よいか、みなもの。
天孫の御子を待ち構えて撃ち取るぞ!!
戦の準備をするのじゃー
と、周りのものをに向かい、軍を集め始めたのです。
ええ~?
天つ神さまと戦うのですか?
とんでもありません。
お考えなおしください。
勝ち目もありません。
周りのものたちで、兄宇迦斯に従うものはありませんでした。
なんだ、なんだ、臆病ものたちめ!
なんで、わしのいうことを聞かぬのだ!!
まだ反抗心がおさまらない兄宇迦斯は、
ある“悪だくみ”を想いつくのです。
その悪だくみとは、いったいどんなものでしょう?
熊野から“陸の孤島”の険しい山脈を越えて
大和へと近づいてはいますが、
一難去ってまた一難。
私たちの人生と、神さまの神生も、本当に一緒ですね。
仲間になる人もいれば、
相容れない人もいるし……。
伊波禮毘古たちは、大丈夫なのでしょうか?
伊波禮毘古の旅は、まだ続きます。
―次回へ
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