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海の宮殿へ 海幸山幸8 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。百七一

桂の木から降臨


こんばんは。仕事終わりの夕刻のひと時「ことの葉綴り。」に向かっていると、すっかり日が暮れて夜になりました。

山幸彦は、海の老賢人・塩土老翁神が手編みしてつくった
竹籠の小舟に乗って、海洋へと旅に出ました。

夜が明けるころ、海の神・綿津見神(わたつみのかみ)の
宮殿に到着するでしょう。
門のそばに泉があります。
そのほとりの枝はの繁った桂の木があります。
その木の上に登って座ってお待ちなさい。
海の神・綿津見神(わたつみのかみ)の娘が
きっと、御子どのを見つけて、良きに取り計らってくれまする。

これは、井戸のほとりの樹木には神が降臨するといういわれがあり、
山幸彦を神の降臨だと認識してくれて
大切に手厚くしてくれる、という塩土老翁神は考えたのでした。

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やがて、海と空の境が美しい曙色に輝きだしました。
夜明けが訪れたのです。
東の空から、朝日が少しずつ顔をのぞかせてきました。

なんて美しい朝日なのだろう。

そう思った瞬間です、山幸彦を乗せた竹の小舟は
渦潮に囲まれて、渦の中へと呑みこまれていったのです。

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気がつくと山幸彦は、海の底にいるようでした
目にしたことのない美しく荘厳な宮殿が、そびえていました。

ここが爺が話していた綿津見神(わかつみのかみ)の宮殿か……。

赤い珊瑚でできた立派な大きな門は固く閉ざされています
その近くに、塩土老翁神の言葉と同じく
泉と神聖な桂の木が繁っています。

山幸彦は、塩土老翁神に言われた通り、
その桂の木の枝によじ登っていきました

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海の宮殿の泉のほとり

そして、静かに待っていました。

ここは、どこだろう?
とても、気持ちのよいところだ。

しばらくすると、美しい器を手にした乙女がやってきました。
この乙女は、海の神の綿津見神(わかつみのかみ)の娘である
豊玉毘賣(とよたまびめ)の侍女
で、
泉に神聖な水を汲みにきていたのでした。

その侍女は、水を汲もうとして、泉をのぞき込むと
その透明な清らかな水面に、神々しい光が射しているのに気づきました。

まぁなんとキラキラと綺麗なんでしょう。
神さまがいらしゃるのかしら?

面を上げて見上げてみると、桂の木の上に
見たこともない麗しく品の良い、澄んだ瞳の優しそうな青年神の姿が見えました。

これは、この世界の方ではあるまい!
なんと不思議な魅力あふれる方なのだろう。
どこから降りてこられたのだろうか?

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山幸彦の神霊力

侍女がたいそう不思議に驚いていると

驚かせてしまったかな。
私は怪しいものではありません。
すまないが、その清らかな泉の水をいただきたいのです。

その麗しい青年神が声をかけてきたのです。

驚きながらも、侍女は器に水を汲んで差し出しました。

すると、その青年神である山幸彦は、その水を飲もうとしませんでした。
首にかけている首飾りの玉の緒をほどいて、
その勾玉を口に含むと、
その勾玉を唾とともに、水の入った器へと吐き出して、
その器を侍女に戻したのです!

えええ?!

侍女は驚いて、器の中を覗き込みます。
その勾玉を取り出そうと手を入れてみましたが、
勾玉は、器の底にしっかりとくっついて取れません!!

何がおきたの?


山幸彦の唾液の呪力により、玉が器へとくっついたのです。
山幸彦の神霊が、器にとりついたのでした。


その玉を器から取り出すことができるのは
この宮殿の姫神だけなのだよ

驚いた侍女は、慌てて宮殿の中へと駆けだしていきました。

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―次回へ。

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