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    高専時代(2015-2020)

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感情電車 #1「プロレスがなければ、平凡な夏でした。」

2015年3月16日。高校受験に失敗した。三人の年の離れた姉たちが通ってきた県内で一番と言われている進学校を受験するも、不合格という結果に至った。滑り止めに受けていた富山高等専門学校に4月から通うことになった。 高等専門学校、通称「高専」。五年制の学校。一年次から専門的な勉強に取り組むのが特徴の専門学校。全国にある高専のほとんどが理系の学科で成り立っているのだが、私が入学することになった富山高専の国際ビジネス学科は、非常に珍しい文系の学科である。ちなみに私が通うことになった富

    • #人の家の話 3 「ほぼ100パー出ねえぞ」

      2022年2月26日。アメリカ出発二日前になった。ワクチン接種証明の発行だったり、絶妙にアクセスしづらいところにある保健所で渡航届を提出したり、面倒な手続きを進めて、今日まできた。面倒な手続きを一つずつこなしても、実感が湧かなかった。 航空券を購入してからのこの間、卒論の提出もあったし、ずっと書きたいと思っていたnoteの作成もしていたし、何かと忙しなかった。あっという間の数週間だった。 アメリカ出発前に安心できるように、出発前日の明日に結果が出るPCR検査を受け、100均で

      • #人の家の話 2 「え、ちょ…フロリダに来るってことは、つまり…」

        年が明けて、AEWのPPVのチケットを買った。まだ航空券は取っていない。過去にシカゴ行きの航空券を買ったけど、ALL INのチケットを買いそびれるということもあったから、とりあえず先に大会チケットだけ買った。 奇跡的に三列目の中央の席のチケットを購入できた。しかもキャンペーンに選ばれて、たったの200ドルで歴史に残るであろう大会の超良い席を購入できた。 さて、思ったより安くAEWのチケットは購入できたわけだが、問題はオーランド滞在中の諸々の費用だ。日本のビジネスホテルのような

        • #人の家の話 1 「高専、俺に任せな」

          酔うとSNSで何か投稿する癖がある。マジでやめたい。酔いどれツイートに、酔いどれストーリー。前日の自分が攻めたツイートをしてたようで、朝起きたら海外のプロレスファンから袋叩きにあっていたことがあった。シラフの時に撮っているひみつの変顔コレクションをストーリーにアップしちゃってたのに誰からも反応がなく絶望した朝もあった。 酔いどれSNSはやめたほうがいい。でも、たまにいいこともある。全ては酔った時の自分にしかできないツイートから始まった。 * 2021年11月17日、朝。起

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          感情電車 あとがきとアメリカ

          この記事を読んでくださっている方の中に、僕の五年間の高専生活を振り返ったnote「感情電車」を読んでくださった方がいたら、先ずは御礼申し上げます。長い文章に付き合っていただき本当にありがとうございました。読んでない方には、是非読んで欲しい…とは言いませんが、読んでくださったら嬉しいです。 一部内容においては、読む方によって不愉快な気持ちになることも予想しましたが、僕にとっては大切な思い出なのでしっかりと振り返りました。 「感情電車」というタイトルこそ今年に入ってから思いつい

          感情電車 あとがきとアメリカ

          感情電車 最終回 「愛を止めないで」

          内藤哲也対KENTAを大阪城ホールで観た体のまま夜行バスに乗り、富山駅に到着した頃には既に内藤対KENTAが昨日の出来事になっていた。上に目をやると、まだ朝なのか夜なのかはっきりと示してくれない冬の朝独特の空をしていた。 冷たい空気が出来るだけ触れないようにダウンジャケットで肌を隠した私の体は、そのままスクールバスへ乗り込み、学校へと向かった。 卒業研究の口頭試問があった。原宿でKENTAのサイン会が行われる2月7日だけは口頭試問を入れないでください、と伝えていた結果、今日が

          感情電車 最終回 「愛を止めないで」

          感情電車 #20 「私が愛した嫌われ者」

          2010年8月下旬。小学五年の夏の終わり。大好きな夏休みも終わりが近づいていて、センチな気持ちになっていた私は、残された夏休みを存分に味わうかのように夜更かしに勤しんでいた。親に見つかったら寝室に戻されるから、仕方なく暗いままのリビングで、当てもなくテレビをザッピングした。何か面白そうな番組はやっていないかとリモコンのチャンネルボタンをいじっていたら、日テレG+というCSチャンネルでプロレスリング・ノアの試合が録画中継されていた。 丁度KENTA対青木篤志が始まるところだった

          感情電車 #20 「私が愛した嫌われ者」

          感情電車 #19 「走れ」

          2019年11月20日。五年間の高専生活が終焉を迎えようとしていた秋。高専卒業後の進路先を決めるために私は三つの大学の三年次編入試験を受ける予定だった。 早速一つ目が落ちた。試験を受けてみて落ちた感触があったので、合格者一覧の中に私の受験番号がなかった時はあまり落ち込まなかった。だが、確かに焦りがあった。 来週には、残りの二校を立て続けに受験する予定だった。一週間という残された時間を前に私ができることは、新たな能力を身につけることより、今の自分のベストを本番にぶつけられるよう

          感情電車 #19 「走れ」

          感情電車 #18 「CHERRY BOY MEETS GIRL」

          2019年8月下旬の東京は熱かった。アメリカのインディーシーンで最も勢いのあるプロレス団体・GCWの日本公演2連戦が新木場1st RINGが行われるのだった。更に、その翌日には、マイケル・エルガン対関本大介というドリームマッチをメインイベントに控えた大日本プロレス後楽園ホール大会が行われる予定だった。夢のようなプロレスウィークだった。東京へ行かない訳にはいかなかった。 私は高専卒業後は就職ではなく、進学を希望していた。秋には大学の三年次編入試験が控えており、夏休みは沢山勉強し

          感情電車 #18 「CHERRY BOY MEETS GIRL」

          感情電車 #17 「永遠プレッシャー」

          2019年8月下旬。先月二十歳を迎えた私は、あるバーに寄ろうか悩んでいた。そのバーは、水道橋の雑居ビルの二階にある。一階のエレベーター前までやってきた私は、そこまで辿り着いたというのに、まだ店に入ろうか悩んでいた。目前にあるエレベーターに乗って二階へ行くか、或いは水道橋を後にして、渋谷のヨシモト∞ホールへ行って、若手芸人のライブを観るか。その二択で悩んでいた。 エレベーターに乗れば、再会したい人が待っていた。二十歳になったからこそ、その人が経営するバーに来ることができた。大人

          感情電車 #17 「永遠プレッシャー」

          感情電車 #16 「君がくれた夏」

          ニューヨークの旅を終えて以降、プロレスを観る元気がなくなっていた。Twitterを続けている以上プロレスの情報は入ってくるものの、プロレス以外のことにもっと夢中になろうと思っている自分がいた。ニューヨークから帰ってきてからの私が嵌っていたことと言えば、クラスメイトの男子を笑かすことだった。 私の所属する富山高専国際ビジネス学科6期生は50名から構成されていて、そのうちの8割が女子だった。男子学生は9人しかいなかった。入学当初は、女の子の空気に流されて五年間を過ごすのだろうと思

          感情電車 #16 「君がくれた夏」

          感情電車 #15 「一皮剥けた春」

          十九歳の私は、絶倫になっていた。プロレスを会場で観戦して、その感想をTwitterやブログを通して発信し続けることが私の生き甲斐になっていた。富山高専にプロレス同好会を作るためにラグビー部時代の先輩と開設したTwitterのアカウントは、完全に私だけのアカウントと化していた。Twitterが楽しくて、もうプロレス同好会を創るなんてどうでもよくなっていた。会場で観たことや感じたことをツイートした時の皆の反応が嬉しかった。私はTwitterという沼に嵌ってしまっていた。 Twit

          感情電車 #15 「一皮剥けた春」

          感情電車 #14 「一皮ムケた春」

          「まだ剥けないのか。今度行かないと」 初めて父にそう言われたのは、私がまだ小学四年の頃だった。父は、私が包茎であることを早々に心配していた。小学四年の私というと、プロレスに嵌った頃だ。そう思うと、えらい早い段階から包茎を心配されたものだなと思う。 私の父は韓国人である。私は日本人の母と韓国人の父の間に生まれた日韓のハーフだ。ハーフではあるが、生まれも育ちも日本である。その上、父は私が小学一年の頃に名古屋で起業して富山を離れ、そのまま父が富山に戻ることはなく、両親は離婚した。

          感情電車 #14 「一皮ムケた春」

          感情電車 #13 「好きってなんだろう」

          2019年2月5日。北村克哉が新日本プロレス退団が発表された。デビュー直前からの約二年間、必死に応援していた選手だった。とても悲しい出来事だった。 *** 北村を初めて観たのは、高専二年の春休みだった。2017年3月の新日本プロレス名古屋大会の会場だった。新日本プロレスのデビュー前の練習生達は、道場に住み込んでいる。そんな練習生が巡業に帯同する。それはその練習生のデビュー戦が近づいていると言うことだ。名古屋大会の会場には、リング周りを箒で掃いたり、試合後の選手にアイシングを

          感情電車 #13 「好きってなんだろう」

          感情電車 #12 「The Show Goes On」

          私はあの時、意地でも一人で海外に行ってプロレスを見てやると心に誓った。母に怒鳴られたあの時だ。 事業の失敗を繰り返す父と離婚した母は、一家の四人目として生んだ私を女手一つで育ててくれた。私が中学生になった頃には既に三人の娘達が社会に旅立っており、経済的にも精神的にも少し余裕が見えてきた。私を片親で育ててしまったことで自責の念に駆られていた母は、「4人姉弟の中であんただけ塾一つ通わせることができなかったから」と、私を色んな街に連れて行ってくれた。 北海道から沖縄まで、日本全国

          感情電車 #12 「The Show Goes On」

          感情電車 #11 「マコーレマコーレカルキンカルキン」

          2018年3月上旬。高専三年の過程を修了した後の春休みの居酒屋のアルバイトの帰り。酷く疲れた状態で家に帰ろうとしていた。頭を働かせまくった訳ではなければ、体を動かしまくった訳でもないのに、あらゆる神経が擦り減っているような感覚に見舞われていた。その疲労には、運動した後の疲れや勉強に集中した後の気疲れとは違う気持ち悪さがあった。 今日は先に3番テーブルに注文していたげんげの唐揚げを、後から注文した14番テーブルに間違えて先に運んでしまい、先にげんげの唐揚げを注文していたお客さん

          感情電車 #11 「マコーレマコーレカルキンカルキン」