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#ショート小説
水面に浮かぶショウジョウバエ【ショート小説】
仕事で南関東のある地方都市に暮らしていたころ、金曜の夜によく同僚Kの家で飲んでいた。
築浅で汚くはないのだが、木造で家賃が安く、玄関のドアも木製で軽かった。もちろん隣の部屋の物音も聞こえてくる。
「もうちょい良い部屋に引っ越したら?」Kが小声で忠告する。
「いや、築2年だけど前に住民いなかったから実質新築だし、ネット込みだし、結構都合いいんだよ」小声のドヤ顔で返された。
今夜もちゃぶ台を囲
【ショート小説】足元に見続けてきたものたち
子供のころ、日曜日、父とサイクリングに出かけた。家を出て河原の土手を走り、もうずいぶん遠くまできた。11月の木や地面の景色はすっかり茶色と灰色が増えてきた。住宅街の狭いアスファルトの道に降りようとすると、目の前に灰色のボロ雑巾が落ちていた。汚いなぁと思いながらそのすぐ脇を通って見下ろすと、雑巾と目が合った。
体を大の字に広げてぺちゃんこになった小動物がいた。何度も車に轢かれたんだろう、骨も砕けて
赤帽タッチ![ショート小説]
異質なものが出現すると、人はそれを「穢れ(けがれ)」とみなす。異質なもの自体を排除しようとすることもあれば、見たり触れたりして穢れを受けてしまった(と感じる)自分を清めようとすることもある。
風邪は誰かにうつせば治る、みたいな昔からの考えも同じものなんだろう。
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小学生の頃、県道の大通り沿いで時折小さなトラックを見かけることがあった。それは白地に