見出し画像

モチベーションとテンション

今日で今年度も終わり、明日からは新年度を迎えます。明日から新しく学校に入学したり、就職する方も多いことでしょう。私も32年前の4月1日、桜満開の日本武道館でリクルートの入社式に臨みました。入社後の仕事内容どころか、リクルートの事業内容もろくに知らないまま入社したので不安と希望が交錯し不思議な気持ちだったことを思い出します。

思い起こすとリクルート、特に私の配属された事業部は非常にエネルギーレベルの高い人が多い部署でした。いわゆるテンションが高い会社だったと思います。毎朝の朝礼とその際の掛け声、目標達成したときの垂れ幕、月末の飲み会などは有名でしたが、とにかくテンションの高い人が多く存在していました。

当時の私は周囲に比べるとテンションが高い方ではなかったと思います。先輩や同期で異常なまでにテンションの高い一部の人たちを少し冷めた目で見ていた記憶がありますし、「どうしたらこんな風になれるのだろうか?でもこうなりたいとは思わないな」と思っていました。ある意味羨ましく一方で違和感を感じていたのです。その後何年も経って一人前と言われるようになってからも、この違和感というか自分自身のテンションと周囲とのギャップは感じ続けていました。とは言っても、酒が入るとバカ騒ぎをしてハイテンションになっていましたので、私も大して変わらなかったのかもしれませんが。

リクルートを「卒業」してから、色々な方に「なんでリクルート出身者にはこんなにエネルギッシュでモチベーションが高い人が多いんですか?」と聞かれました。私はいつも、「確かにエネルギーレベルが高い人は多いです。でも『テンション』と『モチベーション』とは違うので、モチベーションが本当に高い人はどのくらいいるんでしょうね」と答えていました。

その頃から感じていることなのですが、いわゆるモチベーションとテンションとは異なるものだと考えています。どちらも人間のエネルギーに起因しているのですが、私の解釈ではこの二つは様々な点において違うものだと思うのです。

私の理解では、テンションとは短期的なエネルギーの発露であって、これが持続するかどうかは環境や周囲との関係性などによって大きく左右されます。いわゆる高揚感がこの典型で、アドレナリンが出て躁状態になっているときが最もテンションが高いのだと思うのです。しかし逆境に直面したり周囲が冷めた反応を続けるとテンションはどんどん下がっていき、いつのまにか雲散霧消化してしまいます。要するに自分自身の内面から生まれるものというよりは周囲からの影響で発生するものであまり持続性が無いのです。集団のテンションが高いと確かに伝染しますが、それも限りがあります。

これに対し、モチベーションとはもっと長期的なエネルギーであり、置かれた環境や周囲との関係性などにはあまり左右されるものではないと考えます。むしろ逆境にあっても委縮するどころかさらに向上し、周囲がどうであれ高まり続けるのがモチベーションなのです。自分自身の内面から生まれるもので、内発的・長期的なエネルギーの発露と言えます。

いわばテンションは赤い炎、モチベーションは青い炎とでも言いましょうか。ご存じの通り本当に高熱の炎は青くなります。黄色や赤い炎はまだ温度が低い状態なのです。ハイテンションで見た目のエネルギ―レベルが高い人がモチベーションが高いとは限りません。むしろ短期間で燃え尽きてしまい、エネルギーが無くなってしまう人もたくさん見て来ました。

ある人のモチベーションが高いかどうかは、継続的に観察しないとわかりません。日頃テンションが高くないように見えても、モチベーションが高い人はたくさんいます。そういった人たちは周囲の動きや環境に左右されず、じっと青い炎を燃やし続け物事を成し遂げていくのです。日ごろ目立たないし自己主張することも多くないので周囲は気づかないのですが、時間をかけて大きな仕事をする人はたいてい、テンションではなくモチベーションの高い人です。

その意味において、最近よく耳にする「社員のモチベーションアップ施策」といったことには私は概して懐疑的です。オフィス環境を整えたりお互いを褒め合う仕組みを取り入れるといったことは、風土を改善するうえでは確かに効果的かもしれませんが、本来的なモチベーションを高めることにつながるかどうかで言うと、難しいと感じます。

私は、本来的な意味でのモチベーションは「将来に対する希望」からしか生まれないと考えています。表面的な施策に走るのではなく、社内の不公平や不合理を排して社員が本当に将来に希望を持てるようにすること、キャリアアップして自己成長出来るように道筋を整えること、逆境や困難にぶち当たっても乗り越えられるような強靭さ、意志力を持てるよう人材開発に力を入れること、こうした本質的な施策からしか、社員のモチベーションを高めることは出来ないと思います。

これからの時代は、明らかに「人にしか出来ない仕事」の重要性が増していきます。その意味において、本質的な意味でのモチベーションの重要性がますます高まると感じます。ぜひ企業内でそういった立場のみなさまには、表面的なテンション向上施策でなく、本質的なモチベーションアップ施策に真剣に取り組んで頂きたいと思います。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
5
ベリタス・コンサルティング(株)代表取締役。東京生まれ広島育ち。東京大学法学部卒業後、(株)リクルート入社。’00年にベリタス・コンサルティング(株)設立。大学ラグビー部でのポジションはフロントロー。座右の銘は「鶏口牛後」。www.veritas-consulting.co.jp